第153話「金色夜叉と女王」夢主 ページ11
「……おや、いろはかえ?其方が太宰から離れるなんて珍しいのぅ……。」
何か有ったのか?と少し首を傾げながら微笑んで私を見詰める姐様を、私は少し警戒しながら椅子に座ると、目を伏せて答える。
「……私じゃ、力不足だって痛い程身に染みたので。」
「自分から離れてきた、と?まぁ……其方はそう云う者だが……。私もよく覚えとる。例え首領からの命令であろうと、太宰の為にならぬなら絶対に離れぬ頑固者じゃった。私も首領も、手を焼いたものじゃ。……最も、いろはで無ければ今この世に居なかっただろうがの。」
そう云いながら金色夜叉を呼び出すと、仕込み刀を私の首元にまで持ってくる。
私はそれに動ぜず、目を伏せたまま静かに口を開くとニヤリと嗤った。
「……良いのですか、姐様?私の命如きで鏡花ちゃんの望みを売ってしまっても。」
「何じゃ、知っておったのか。……それとも、太宰に教えられたのかえ?」
姐様は詰まらなそうにそう云うと、スッと夜叉を消して私にそう問いかける。
私は感情を消した表情で、声で答えた。
「真逆。太宰さんは私に情報を自分から云う事は決して有りません。私が問いたとて、必ず教えて下さる訳では有りません。……推理ですよ。貴方が命に代えても望むのは鏡花ちゃんの望みを叶えること。……違いますか、紅葉姐様?」
そう云った私に、姐様は降参だとでも云う様に両掌を上げると溜息を吐く。
それから、ちらりと私を見ると呆れたような表情になる。
「……嗚呼、その通りじゃ、いろは。全く……拷問でもされているような気分じゃった。太宰の技術を確実に引き継いでおるの…。否、若しくは…
「さぁ。其れに関しては私も全ては把握出来てません故。」
「そうか。…いろは。」
「……何です?」
「……然りと休んでいくと善い。負傷しているのじゃろう?」
そう、心配そうに私を見詰める姐様に、私は少し笑みを零すと頷いた。
「……はい。」
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時