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第145話「虎と女王の人格」夢主 ページ3

「ねぇ、敦くん。質問しても良い?」

太宰さんが走り去って少しして、私は長椅子に座ると敦くんにそう問いかけた。
敦くんは、少し不思議そうな顔をすると頷いてくれる。
私は微笑むと、口を開く。

「……敦くんにとって、異能は……虎は、どんな存在なの?……ほら、私も敦くんも“本当の”異能は使いこなせてないでしょう?……分かるのは、敦くんだけだと思ったの。」

私は目を伏せ、胸元のリボンを弄りながら問いかけた。
すると、敦くんは少し考えた後、言葉を探るように、ゆっくりと語り始める。

「うぅん……そうだなぁ……。異能は、僕にとって最強の武器で……頼れる仲間だよ。けど、()は、僕を喰らい尽くそうとする……そうだなぁ、敵、かな。でも…僕には、虎には僕とは違う人格が有る気がしてならないんだ。」
「……人格?」
「うん。一番最初に芥川と戦った時……虎は、僕の怒りに答える様に戦ってくれた。……だから、只の獣じゃないんじゃないかな……って。」

私は、敦くんのその言葉に雷に打たれたような衝撃を受ける。
何故なら、考えた事も無かったことだったからである。

確かに、モンゴメリのアンも、人格が有る様に見えたし、森さんのエリス嬢も……設定だとは言え、ある種の人格は有る。

……なら、虎にも、女王にも有るのか。

「そうか……人格……。」
もし女王に人格が有るなら(・・・・・・・・・・・・)、きっといろはちゃんの事が大切で仕方ないんだと思う。あの時の女王は、僕を威嚇してた様に見えた。まるで、大切な子ども()宿敵(ヘビ)から守ろうとする親鳥みたいに。」

そう云った敦くんに、私はやっと答えを見つける。
私の異能は、女王を支配するんじゃなく……“お願い”するのが最適解だったのだ。
私が顔を輝かせた、その時……敦くんは、思い切ったように言葉を私に投げかける。

「……僕も、一つ、聞いても良い?」

私は、答えるまでも無く頷いた。

「……何で、いろはちゃんは……無事だったのに、孤児院に……否、僕や唯ちゃんにだけでも良かった。何かしらの連絡をくれなかったの?」

……私は、心に深く包丁を刺されたような感覚に陥る。
口を開いて、答えようとする。
敦くんが、不安げな敦くんを納得させる答えが有る筈だった。
確かに、そこに有った筈だった。

けれど、私の口からそれ(・・)が出てくることは一度たりとも無かった。

第146話「白黒の厄災(前編)」夢主→←第144話「胃腸の限界」夢主



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設定タグ:文スト , 中島敦 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時

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