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第103話「もう一つの戦い」アグラソル ページ10

「すごいすごい、軽業師みたい!もっと見たいわ!」

そう目を輝かせて云うが、次の瞬間にはモンゴメリの目からは光が消えていた。

「何て力強くて便利な異能なんでしょう。さぞ、幼少から皆にちやほやされたに違いないわ。」
「……」
「…貴方たち、元孤児なのですってね。あたしも孤児院育ちなの。とても寒い所よ。凍ったみたいな水で一日雑巾がけをした後は何日も指の痛みが取れなかったわ。…それに、あたしの異能はこんなだから皆から気味悪がられちゃって。…貴方がさらわれた時、探偵社は必死に探したそうね。…素敵だわ。きっと貴方が良い異能を持ってるからね。」
「僕は……__」

話を聞いているだけなのに、その経験が現代社会において、“あってはならないもの”なのだと判る。

ペラペラとお喋りをするモンゴメリに、敦さんは何かを云いかけたがモンゴメリはそれを許さない。
言葉を被せて、モンゴメリは敦さんの言葉を遮った。

「あたしも異能を買われて組合(ギルド)に拾われたの。…けど、組合(ギルド)は失敗を許さないわ。今回の作戦をしくじったら、汚れた紙ナプキンみたいに捨てられる。…そしたら独りよ。そんなのって信じられる?」

ぎゅっとワンピースの裾を掴む、モンゴメリ。

「ねぇ、なぜ貴方なの?なぜ、あたしではないの?」

モンゴメリは「自分にも恵まれた場所に行く権利はある筈だ」とでも云う様に、敦さんを睨み付ける。
僕たちは、何も云えず…ただ、そんなモンゴメリを見つめていた。

「不公平よ。貴女もあたしの気持ちを思い知るべきだわ。…この部屋の中で永遠にね!」

モンゴメリの合図でアンと敦さんの追いかけっこは再開した。
…その一方で。

「…やぁ、数日ぶりだね。いろはちゃん…否、アグラソル君かな?」
「…その質問にはお答えしかねます」
「その行動が答えになっているのだけれど…まぁ良いだろう。…話を、聞かせてもらえるかな?」

隣に来た男性…ポートマフィアの首領(ボス)は鬼ごっこをみつめながら、僕にそう話かけた。
静かな戦いが、始まろうとしていた。

第104話「鬼ごっこの攻略法」アグラソル→←第102話「鬼ごっこの始まり」アグラソル



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設定タグ:文スト , 中島敦 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年7月10日 12時

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