第133話「甘味と私」夢主 ページ41
「あ〜〜〜ん!」
其れを、太宰さんは嬉しそうに見詰めていた。
「如何だい、いろは?美味しいだろう?」
「はい!とっても!幸せです!」
私はにっこりと笑ってそう答えると、「敦くんと太宰さんも如何ですか?」と聞いてみる。
「……でも、此れは太宰さんがいろはちゃんに買ったものだし」
「嗚呼。私は良いよ。」
「……そう、ですか?甘味って美味しいから、幸せを形にした様なものだから、分け合えば幸せのお裾分けになると思ったんですけど。」
私が少し俯いて答えると、太宰さんと敦くんは顔を見合わせる。
「……じゃあ、一口だけ良い?いろはちゃん。」
敦くんが少し遠慮がちにそう云った。
私はその言葉に、顔をあげ、笑顔になる。
「……!どうぞ!」
「ん…美味しい!美味しいです、とっても。…太宰さんも如何ですか?」
「……そうだね。貰うよ。」
右に太宰さん、左に敦くんに囲まれて、私は更に幸せな気分になる。
甘味は、甘さは幸せの味だ。
お母さんが、ケーキを焼いてくれて、お兄ちゃんと私が頬張って、お父さんが嬉しそうに笑って眺めていた。
幸せの味だ。
だから、わくわくするし落ち着く。
…そう、落ち着くはずなのだ。
…なのに、なぜだろうか。
幸せで溢れているはずなのに、安心で包まれている筈なのに、
私は混乱する頭で思う。
今は戦争が始まって間もない。
今、集中出来ていなくては如何する…と。
「……よし!食べ終わりました!早く行きましょう、太宰さん!行こう、敦くん!」
私は敦くんの手を取り、太宰さんの背中に手を置くと走り出したのだった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年7月10日 12時