第59話「怒り」夢主 ページ10
「はぁ……、はぁ……。……振り切れた?……久しぶりに本気で走ったな……。もっと体力付けておかないと……。」
私は小さな声でそう呟きながら、地下へと繋がっている階段を降りていく。
「今度は一体誰が来たのかな〜〜……っと、いろはか、少し意外な訪問者だ。」
「……ほんとに居た。っていうか、どうしたんですかその頬!芥川さんの仕業ですよね、後で絞めときます。……でも、本当に無事で何よりです。」
私はこっそり念の為盗ってきた救急箱を開いて、バレない程度に手当する。
「……あ、一旦拘束具、解きますね。“血管の保護の為に”。」
「嗚呼……有難う、私の可愛いいろは。」
私はヘアピンを取り出し、鍵を開ける。
……勿論、この技も太宰さんから教えてもらったものである。
「……それでA、どうしてここに?それに……その首輪は一体?」
「太宰さんを助けに来た……と云いたいところですが、私も囚われの身なんですよ。……これ、私が安吾さんと一緒に開発した“身内を捕らえる為の首輪”なので、下手に壊せば確実に私は死にます。……それに、マフィアの周りに設置してある特殊な電磁波を一定以上感知すれば麻酔を打たれてその上位置情報を、この場合は芥川さんに知らせてしまうので……嘗ての私が強力に作り過ぎました。隙がありません。」
私は淡々と事実を述べる。
……過去の私、もうちょっと隙を作っても良かったんじゃない?
なんて思ってしまったのは此処だけの話である。
「……そうだこれ、差し入れです。」
「嗚呼、有難う。」
先程使ったヘアピンを、私は太宰さんに手渡して、それから太宰さんのお腹に
「うっ!?ちょ、いろは!?なんだい、急に!!」
「私は怒ってるんです!」
私はそう云うと、もう一度お腹を殴ったのだった。
避けられる筈なのに避けない太宰さんも太宰さんだと思う。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時