第60話「悲し気な」夢主 ページ11
「太宰さん、貴方莫迦なんですか!?せめて読めてるなら読めてるって云って下さい!本気で心配したでしょうってか心配じゃ足りませんでした!女王が暴れました!敦くんが死んじゃうとこでした!!まだ私に殺しをさせたいんですか、太宰さん!」
「い、いや、いろはも報告義務があるし、云わない方が良いと思っ……女王については悪かったよ!悪かったって思ってるから、今度デート付き合うからつねらないでくれ給え!私はじわじわ痛いのが一番嫌いなの、よく知ってるだろう!」
「……云いましたね、太宰さん。絶対ですからね」
私は太宰さんを精一杯睨みながら、出来るだけ声を低くして怒っていることを伝える。
途中で言い訳して逃れようとする太宰さんをつねると涙目で謝ってきた。
…と、何がおかしかったのか、クスクスと笑いながら私の頭を撫でる、太宰さん。
「……太宰さん、私は怒って……!!」
「嗚呼、分かっているよ、いろは。私も反省はする。……いろは。いろはが抜け出せたなら……その時は、一日……いろはを私のお姫様として、敬おうじゃないか。」
「……太宰さんは、本当に……。もう、仕方のない人ですね。分かりました、その条件で取引に応じましょう。」
私は仕方ないので、笑って見せる。
……すると、太宰さんは心配してくれて有難う、と私を優しく抱きしめて下さる。
「……いろは。いろはは、私に恋愛感情を抱いたことは無いのかい?」
「ありませんね。……一時期、同僚から『そうなんじゃないか』と言われてドギマギしていたことは有りましたが……「そんなわけない」で終わりました。」
「……そう。」
太宰さんに抱きしめられ、幸せの中で、私達はそんな会話をする。
私は、太宰さんの瞳に……悲し気な光が宿ったことに、気が付かなかった。
第61話「想い人(太宰治編)」太宰治→←第59話「怒り」夢主
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時