第58話「好み」夢主 ページ9
ソファに腰掛けて、用意されていた洋菓子を頬張り、新しく用意してもらったジュースを美味しそうに飲む可愛らしいお客様……基、エリス嬢は、とてもご機嫌である。
足元では、黒猫のラブが満足げにミルクを飲んでいた。
……因みにラブは、マフィア時代の私が“護るもの”としてよく一緒に居た、いわば相棒である。
今は確か、基本的に戦闘に出向かない私に代わってエリス嬢がペットとして可愛がっていた筈である。
「この部屋、凄く可愛いわね。私もここに住みたくなっちゃった。いろはが手配したの?」
「いえ、趣味は私のものですが……中也さ……あ、いえ、中原幹部が手配して下さったらしいです」
「へぇ。……いつも通りの呼び方で良いのよ、いろは。別にリンタローには云わないし、云ったところで仲いいのは結構って云って終わるだけだし。」
そう云いながら、ご機嫌な様子で次のケーキに手を伸ばすエリス嬢を、私は微笑みながら見つめ、紅茶を飲む。
「……そういえば、このお菓子も中也が用意したのよね?すっごく美味しいけど……これもいろはの好みなの?」
「えぇ。エリス嬢のお口に合ったなら何よりです。」
「へぇ……愛されてるのね、いろは。私もいろはの事、大好きよ!」
にっこりと幸せそうに微笑む少女に、異能だとは分かっていてもきゅんとする。
そう、途轍もなく愛らしいのだ。可愛らしいのだ。
異能生命体だとかそうじゃないとか関係がないくらいに。とっても。
「私もエリス嬢のこと愛してますよ。」
「ふふ、嬉しいわ!……どうしたの、ラブ。……え、リンタローが近づいてる?」
ラブがエリス嬢の腕に、しっぽをポスポス当てている。
きっと、二人の間だけのそういう合図なのだろう。
「またね、いろは!私、また来るわ!」
「はい、私が此処に居る間は何時でもお待ちしてます、エリス嬢。」
可愛らしいお客様達を見送った数分後、慌てた様子の森さんが入ってくる。
「も、森さん……!?」
「エリスちゃん見なかったかい!?一緒に買い物に行きたくて探しているのだけれど全然見つからなくてね……。」
……嗚呼。
私は
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時