第83話「勘違い」夢主 ページ39
私が太宰さんを起こそうと近づくと、寝ぼけているらしい太宰さんは私を抱きしめた。
「……太宰さん、お酒臭いです。」
「いろは……私、いろはのこと好きだよ。愛してる。」
「私もですよ。……どうしたんですか、太宰さん。」
「……違う。私といろはでは、「好き」も「愛してる」も、意味が……違うのだよ……。私は……いろはの、こと……部下や妹としてじゃなく……__」
太宰さんはそこまで云うと、一気に眠気が覚めたらしく真っ青になった。
「……あの、太宰さん?」
「私、何処まで云った?」
何時になく真剣そうに、慌てた様子で私に聞く太宰さんに、私は意味が分からず少し困惑する。
……一体、急にどうしたというのか。
「えっと……私の事、好きだけど部下としてじゃないっておっしゃってました。」
「……いろは。」
「はい?」
「……さっき私が云ったこと、全部忘れてくれ。後……有難う、おやすみ、私の可愛いいろは。」
「はぁ……。おやすみなさい……。」
太宰さんは私を開放したかと思うと、さっさと部屋に入っていく。
「……部下や妹としてじゃ、ない……?」
私は勘違いしそうになる。
私は長年太宰さんのお傍に居させて頂いているから、太宰さんは「勘違い」させる天才なのだという事も知っている。
けれど、慌てたような血の気が引いた太宰さんの顔が脳裏に浮かんだ。
……いや、まさかそういう訳じゃないだろう。
きっと、酔ってらっしゃっただけ。
私は頭を冷やすために、お風呂に入る事にしたのだが……以前、結論は出なかった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時