第76話「マフィア抜けの直後(前編)」樋口一葉 ページ29
時はいろは達がマフィアの本拠地から脱した直後。
私、樋口一葉は…いろはさんが居るはずの部屋の前に立っていた。
「(何て云えば自然に特に下心無く来たことを伝えられるのか……。い、否、下心何て有りませんし!……よし、上に様子を見て来いと云われたと……でも待ちなさい、樋口。それだと会話が出来ない……。折角私達の世代では憧れの的であるいろはさんと一対一で話せる機会なのだから__)」
何て考えていると、見張りをしている同僚(因みに戦闘等は私より優秀だ)に名を呼ばれる。
「……樋口。」
「何ですか!私、今ちょっと思考を巡らせるのに忙しいんですが__!」
「あっそ、どうでも好いからはよ入れ。邪魔だ。」
「えっ、ちょ、そんなぁ!」
こうして部屋に放り込まれた私だったが……直ぐに違和感に気付く。
あまりに静か過ぎる。
眠っているにしても、寝息が聞こえない。
かと云って、外に護衛が居たのだから、少し散歩……という訳でも無さそうである。
……そこから導き出される結論は、ただ一つ。
「……いろはさんが、マフィアを……抜けた…………?」
私の少し震えている声は、静かな部屋に消えていく。
……それなら、ソルは?ソルも抜けた?
ソルは…マフィアの最深部と云っても過言では無い程の情報を知っているというのに。
……ともかく、
外の見張り達に、一応捜索を命じよう。
「………拙い。」
私は、自分の手が震えているのに気づいた。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時