第48話「理由」夢主 ページ49
「う……。」
「おや、起きたかい、いろは。」
私は小さな声と共に目を開き、ぼんやりとした頭で起き上がった。
すると、そんな私を与謝野姉さまは少し安心したような声色で声を掛けて下さる。
「与謝野、姉さま……?」
「そうだよ。……大丈夫みたいだね。……敦が凄く心配してたよ。一緒に会いに行くかい?」
「はい、あの……、私……大丈夫だと、思いますか?」
「……このままじゃ、そんな長く持たないだろうね。だから云ったじゃないか。『依存し過ぎだ』って。」
与謝野姉さまの答えに、私は目を伏せる。
「……笑わないと。」
「無理はするンじゃないよ。」
「……はい。」
「……さて、いろはも起きたことだし買い出しに行こうと思うンだけど……いろはも一緒に来るかい?」
「そう、ですね……気分転換に。」
私がそう、力なく笑うと……与謝野姉さまは、また少し安心したように微笑む。
「嗚呼、そうだ。……これ。握りしめていたらしいよ。」
与謝野姉さまはそう云い、私が何よりも大切にしているペンダントを渡して下さる。
これは、覚えている。
女王に意識を乗っ取られた私が取り返せたのは、此れが視界に入ったからなのだから。
「……これのお陰で、敦くんに危害を与えなくて済んだんです。私……きっと、一人になった方が良い。私が弱いから……こんな異能を持っているから、皆に、迷惑を……__」
「……その辺でやめてくれるかい?いろは。悲劇のヒロインごっこは反吐が出る。……何より、その異能のお陰で太宰と出会えたんじゃないのかい?」
冷たい与謝野姉さまの横顔は、優しさがにじみ出ていて……冷え切っていた私の心に、温かさが戻ってくる。
「……はい。そうですよね。異能が悪いんじゃない。私が、もっと強くならなくちゃ。……其れに、嫌な事ばかりだった訳でもないから。」
今度は心から笑って、そう答えてベッドから降りる。
大丈夫。
私は一人じゃないし、太宰さんだって死んだわけじゃない。
探し出そう。救い出そう。
時には支えられながらでも……歩いていける。
そう、初めて思えた。
「あ、与謝野さん……いろはちゃん!」
「ごめんね、もう大丈夫。助けに来てくれて、有難う。」
「ところで、誰かに買出しの荷持ちを頼もうと思ったンだけど……アンタしか居ないようだねェ。」
そういった与謝野姉さまの言葉に、慌てた様子で振り返った敦くんは呆れたような顔をしている。
そんな敦くんに、私はクスリと微笑んだのだった。
第49話「黒髪おさげの少女」夢主→←第47話「女王対人虎」中島敦
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業猫(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます……修正しますので少々お待ちください;; (2020年6月4日 23時) (レス) id: 3f4322bc19 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 名字を設定しても、(名字)のままなんですけど.... (2020年6月4日 23時) (レス) id: 63ee3bf45b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年5月20日 18時