鬼が二十匹 ページ21
「あれもアンタが拾ったのか」
「さあ私が拾ったのか私が拾われたのか
今じゃよく分かりません」
「氏も素姓もしれないガキを集めて手習いだの剣だの教えてどうなるあんな連中が侍になれるとでも」
質問攻めのように次々と質問してくる男の子
「さあどうなるんでしょう
私も楽しみです」
「こっちがきいてんだよ」
「私も聞いているんです
侍ってなんですか
教えてもらえますか」
「アンタ侍じゃねェのかよ」
二人とも漫才かの様な会話をし始め、ふふと少し笑ってしまう
マイペースな松陽に巻き込まれて少しイライラしてるみたい
苦笑しながらそんなことを考える
「さあ少なくとも君が思うような侍ではない」
そういうと松陽が立ち上がり、部屋の襖から見える外の景色を眺めながらいう
「君は侍になるのには何か資格でもいると
護るお家がなければ
尽くす主君がいなければ侍になれないと思っているんですか」
「私はそうは思いません
武士道とは何も国や主君に忠節を尽くす道だけをさすのではない」
「弱気己を律し強き己に近づこうとする意志
自分なりの美意識に沿い精進するその志をさすのです」
「だから勉学に励み少しでも真っ当な人間になろうとする彼等も少しでも強くなりたいとこんな所に道場破りにきた君も」
「私にとっては立派な侍なのです」
「たとえ氏や素姓もしれなくともたとえ護る主君も戦う剣ももたなくともそれぞれの武士道を胸に掲げそれぞれの侍になることはできる」
「この先彼等が何者にもなろうともね
そんな彼等を一人でも多く見届けるのが
そう私の掲げた武士道なのかもしれません」
「君も道に迷ってここに流れついたんでしょう
私もそうです。未だに迷っている」
「それでいい…悩んで迷って君は君の思う侍になればいい」
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作者名:ヘアリー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/HAK/
作成日時:2019年2月22日 21時