マネージャーの鑑【北信介】 (ページ11)

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旅行 5 ページ11

貴方視点

宿に戻り、温泉に入る事にした私達。

チェックインした時に少しだけ覗いたが、大人5、6人は足を伸ばせるほどの湯船の大きさに、手入れをされた綺麗な低木と花が印象的でとても楽しみにしていた。

『信介くん、先に入る？』

座椅子に腰掛けお茶を飲んでいる信介くんに声をかける。

信介「何言うとん。」

『へ？』

信介「一緒に入るんやろ？」

さも当然のように言う信介くんを思わず凝視する。

信介「なんや、そない見つめて。嫌か？」

『ううん、嫌違うよ。』

信介「ならええやん。」

湯呑みを置いて立ち上がり、私の肩を抱いて脱衣室へ向かう。

やっぱり、今日の信介くんはいつもと違う気がする。

『信介くん、旅行楽し？』

表情こそ変わらないが、彼の心情は行動や言動で充分に読み取ることができる。

今朝、移動の車ではずっと手を繋いでくれていたし、普段のデートでは滅多にカメラを向けてこないのに、写真も沢山撮ってくれた。

そんな姿を見てどことなく楽しそうに見えたのだ。

私の質問に一瞬目を見開いて、フッと笑を零した。

信介「めっちゃ楽しい。楽しいし、幸せや。」

そういって信介くんは脱いだ服を綺麗に畳んで浴室のドアを開けた。

『(その顔はずるいわ…。)』

彼の不意な笑顔は危険。
付き合い始めてそう確信させられるのはこれで何度目か。

化粧台の鏡に映った私の顔は心なしか赤く見えた。

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2人でゆっくり温泉に浸かり、美味しいご飯を食べてお酒を嗜んでいれば、時刻は22時を過ぎていた。

信介「そろそろ寝るか？」

ほろ酔いでうとうとし始めた私に信介くんがそう告げる。

信介くんは当然酔わない。彼に備わった強い意志の賜物だろう。顔色一つも変わっていない。

『うん、寝る。』

信介「歯磨いて先に布団入っとき。」

『ん、ありがと。』

お言葉に甘えて眠い目を擦りながら歯を磨き、寝室へ向かう。

布団へするすると滑り込めば一気に睡魔が襲ってきた。

せめて信介くんが来るまでは…

瞼が閉じないように目に力を込めて信介くんが来るのを待った。