旅行 4 ページ10
随分と歩いた。
店の数もポツポツと少なくなっていく中で、貴方がぴたりと足を止める。
『信介くんあれ。』
指した方向に目をやればそこには
信介「…金魚?」
多種多様な金魚がいろんな形の金魚鉢に飼われ、店の外にならんでいた。
店内は吹き抜けになっており、2階にも壁に沿うように鉢がズラリ。客は俺たちの他に数人いるようだ。
「いらっしゃい。ゆっくり見てってくださいな。」
店主らしき老人に声をかけられ、貴方は目を輝かせながら金魚を見始める。
信介「見たことない金魚ばっかりやわ。」
『宝石みたいやね。』
信介「綺麗やな。」
写真も撮って構わないとの事だったので、貴方が背中を向けているうちに、またカシャリとシャッターを押した。
『ふふ、今日はうちのこと沢山撮ってくれるんやね。』
信介「なんで貴方撮ったって分かったん?」
『なんとなーく。』
そういって2階へと上っていく貴方を追いかけようとした時だった。
「ガールフレンドですか。」
いつの間にか俺のそばにいた店主がそう尋ねてきた。
信介「いえ、もう籍は入れとります。」
「奥様やったか!それは失礼しました。いやあ、えらい上品な方やなあ思て。」
信介「性格も申し分無しです。」
「せやろなあ、なんや金魚眺めてはるだけやのに絵になるわ。ええお嫁さんや。」
末永くお幸せに。そうお辞儀をして金魚の世話をしに俺から遠ざかっていった。
貴方は別け隔てないその性格からか、昔から周りに自然と人が寄ってくる。
特に年上受けが良いらしく俺の両親は勿論だが、何より婆ちゃんが貴方の事を気に入っており、仕事で会う度貴方との日常生活を聞き出してくる。
今も貴方の事を褒められ内心またかと思ったが、決して鬱陶しい訳でもなく。
ほくほくと優越感に浸りながら貴方の所へ向かえば、俺に気づいてニッコリと笑う。
ほんま、ええ奥さんや。
彼女の笑顔を見る度にそう思うのだ。
『え?』
信介「ん?なんや?」
びっくりした顔で見つめてくるので、問いただせばクスクスと笑うばかり。
『うち、信介くんのそういう所も好きやで。』
信介「…?おん。」
『さ!そろそろ宿に戻ろか。』
また俺に腕を絡ませて歩き始める。
行き道よりもゴキゲンな貴方を見て、また心が満たされていくのだった。
『なあなあ、さっきのって無意識?』
「さっきの?」
『やっぱり無意識か〜!』
「?」
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作者名:あい | 作成日時:2020年6月5日 22時