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「……なんでそんな事言うんだよ！！？」
燈矢くんは彼の肩に置かれていた私の手を力一杯払い除けた。そして、顔を上げ思いっきり私の肩を掴んで前後に揺さぶった。燈矢くんの指が食い込んで肩が軋んだ。それに熱い。
『と、うやく……』
「俺とAちゃんは一心同体なんだろ！！なぁ！！二人で一つなんだろ！！二人で協力すればどんな敵にも敵うってお父さんが言ってた事忘れたのか！？」
がくがくと体を揺さぶられ、じわじわと肩を焼かれて、痛みと酔いで満足に受け答え出来ずにいる私を無視して、燈矢くんは更に力を込めて肩を握った。あまりの痛さと恐怖に燈矢くんの腕を掴んで離させようとしたがびくともしない。
「俺とAちゃんは一緒じゃなきゃいけないんだよ！！同じ事考えてなきゃいけないんだよ！！Aちゃんだってずっとそうしてきてただろ！！なんで今更離れようとするんだよ！！」
『やめ……っ！』
「Aちゃんは……俺のAちゃんは俺を否定なんてしない！！俺と同じ目標を持って訓練に勤しむ俺の半身なんだよ！！俺はAちゃんでAちゃんは俺なんだ！！……お前、偽物だろ！？Aちゃんを返せよ！！俺のAちゃんを返せ！！！！」
あまりの剣幕に喉が締められた様な気がした。横暴に身体を揺さぶられ、ヒュッと息を吸ったままろくに吐く事が出来なかった。きっと肩も火傷を負ってしまっただろう。焦げた臭いが鼻腔を掠める。怖い。今はただ燈矢くんが怖い……。がくがくと身体の震えが止まらない。冷や汗もだらだらと止まらない。
「俺を一人にしないでくれ……。」
『あ……あ。』
「Aちゃんまでいなくなったら俺……本当に一人ぼっちなんだよ……。」
肩を強く握っていた、私より一回り大きな手はゆっくりと離された。先程の野太く強い声を発していたとは思えない程弱々しい掠れた声に私は酷く動揺した。燈矢くんは力一杯、それでいて優しく私を抱き寄せ、肩に顔をぐりぐりと押し当ててすんすんと鼻を鳴らした。その憐憫さが漂う姿に、先程勢い任せで燈矢くんを否定してしまった事に対しての罪悪感というものがのし掛かってきた様に思えた。
『ごめ、んね。燈矢くん。私、これからも一緒に、いるから……。私は、燈矢くんを一人にしないから……。』
恐怖と良心の狭間で揺れ動く私は結局弱いままで何も変われちゃいなかった。
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作者名：アサギ | 作成日時：2021年8月18日 3時
