第五人格(identityV)短編夢小説

振り回されるのも一興(魔トカゲ)(甘)(海老様リク) ページ26

袋の鼠ってのは、この事だと思う。
だがよ、その行き場を無くした鼠が全く怖がりもしねぇなんてのは聞いた事ねぇ。

「……ちったぁ怖がれよ」

「きゃー」

「棒読みじゃねぇか」

普通は追い込まれた状況下で怯える所だろ？とツッコミを入れれば、目の前の奴は面倒くさそうに"逃げるの疲れた"の一言。
確かに。今回の試合はこの時点で俺の負けは確定しているし、こいつがハッチの場所を把握している素振りも無かった。

だがよ、少しぐらい怖がってくれてもいいんじゃねぇか？
ラス一だからって、面倒くさそうにされるのは俺のプライドから少し癪に障る。

「……もう足が筋肉痛で疲れたの…ルキノ、早くダウンさせて試合終わらせて」

「……随分とナメられたもんだな、俺も」

「あ〜、ごめん。別にそんなつもりじゃ…」

「いんや、いいって事よ。まぁ、試合は終わらせねぇけどな」

どういう意味？と問い掛けるAの言葉は俺の行動で遮った。
自慢の長舌で首元をひと舐めしてやれば先程の威勢は何処へやらとAの顔色が一気に変わる。

「な、なにしてっー……」

「なぁんだ、こうすりゃ怖がんのか」

「、ルキノは………私を食べるの？」

「……は？」

別に今の行動は、カニバリズム的な意味でとった訳じゃねぇ。
ただちょっと からかっただけだ。
だが、からかっただけにせよこの状況は普通物理的に食べられるっつー解釈よりかは………………

「(………違ぇんじゃねぇかぁ…？)」

怖がらせる事が出来たのは良いものの、こいつの阿呆な解釈の所為でイマイチ腑に落ちない。
別に元からそんな気があったつもりじゃねぇが…………

「…………ルキノ？」

目下で、若干涙目になってるこいつの顔を見て気が変わった。

「やっぱ俺、お前の余裕無い顔 もっと見てぇわ」

一時の気の迷いか何だか知んねぇが、動いちまう俺も大概阿呆だ。


振り回されるのも一興
(恨むなら余裕ぶっこいてたお前を恨めよ)

正しく不誠実(写真家)(切甘)→←染める白、染まる黒(白黒無常)(切甘)

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