またきっと明日はくる.45 ページ45
「オダさん。おはようございます」
目の前に居る少年ははっきりと、聞き間違えることもないであろう声量で確かにそう言った。
織田作之助にしてみれば、仕事で任された、見覚えのない、名前も聞かされたばかりの子どもが自分の名前を知っているというあまりにも違和感の溢れる心境だ。
しかし、友人に言われた事を瞬時に思い返し、返事をする。
「ああ、おはよう。」
そう、目の前にいる少年に、この男は「恩人」でなければならないのだ。
_____________________
「この子はね、ちょっとしたポートマフィアの極小敵対グループに捕まってね。
そこで異能力者によって少し記憶を弄られたんだ。
まぁ、攫われる前から色々精神的に大きな負担があってむしろその記憶がなくなってよかったんだけど…
あぁ、それでね。今この子には刷り込みしているのさ。
君はこの子を預かるにして、この子の恩人として振る舞わなければならない。
その記憶を植え付けた上で君にはこの子の恩人として仕事を任せる。
呉々も、この子には気づかれないように。
何かのきっかけで前の記憶が戻ると厄介だからね。」
「その前の記憶っていうのは………」
「いやね、ちょっとした問題で、まぉ精神的に負担が大きくて、「耳が聞こえなくなっていた」んだ。
そんな記憶、ない方が「この子のため」にもなるだろう?」
「……………………………………」
_____________________
織田作之助があの時の友人の笑顔を思い返すと、「この子のため」という以外にも何かしら理由があるのは察していた。
しかし、それでも耳が聞こえなくなるまでこの子どもを追い詰めていた記憶とはやはり思い出させる必要もないと、織田作之助は考えて今回の仕事を受けた。
「……体の調子はどうだ?」
「すっかり元気ですよ!
傷の手当て、またオダさんがしてくれたんですよね。
ありがとうございます!」
「…あぁ、そうだ。
あまり動くなよ、傷口が開くからな。」
恩人として振る舞う。
目の前の子どもに何も悟らせてはいけない。
自然な行動をしろ。
そうして伸ばした手を少年の頭に乗せた。
「……………へへっ」
頭を撫でると子どもらしい、照れと無垢の合わさった笑顔になる。
「………………………………………」
織田作之助は再び考えた。
その上で「自分はこの子どもの恩人であるという嘘」を、突き通すことを決意した。
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アミ - 更新頑張って下さい! (2020年3月27日 16時) (レス) id: 808cf034c3 (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月23日 23時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
月夜 黒輝(プロフ) - すごく難しい気が...。でも凄くい話ですね!続きが気になります!更新出来れば再開してください。お願いします。 (2018年12月15日 7時) (レス) id: 9616d08dd2 (このIDを非表示/違反報告)
魔夜美(プロフ) - 更新がんばってください (2017年5月3日 16時) (レス) id: a15b068210 (このIDを非表示/違反報告)
白蜜 - とても面白いです!! 続きが凄く気になります! (2017年2月13日 7時) (レス) id: 6cc179f9dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いないな | 作成日時:2016年6月23日 18時