第十五訓 ページ16
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ピッ
「もしもし土方ですけど…はい、今ですか?全然大丈夫です…。え、今回の限定版DVDボックスはフィギュア得点付きですか…じゃ、保存用とあれで二つ用意してください。」
淡々と会議中に電話を取り話始めた土方に、隊士たちは茫然とするしかなかった。
一体、副長に何があったんだと頭の中は不安と驚きでいっぱいだ。
他にも、捕らえた攘夷志士を拷問するかと思いきや拷問部屋で修学旅行の夜かと疑うくらい間抜けな副長の姿が見えたりとおかしなことが起きまくっている。
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「…てな具合だ。すべては刀を手に入れてからおかしくなっちまった、どうやら俺はほんとにこいつに呪われちまったらしい。」
「ッだはははは!!」
「だからいうの嫌だったんだよ信じてねーだろお前信じるわけないだろお前」
場所は変わってファミレス、土方がおかしくなった原因を沖田に話しているのである。
「ふと気がづくと別人格に入れ替わってやがる。いや、あれは別人格なんかじゃねェ…人が誰しも持っているヘタレた部分がこいつによって目覚め始めてるんだ」
「土方さアん、ヘタレを刀のせいにしちゃいけねーや。土方さんは元々ヘタレでしょ」
「そうっすよね…俺なんて元々こんな…」
「あらら…こいつァほんとに調子がおかしいや。じゃ、んな妖刀さっさと捨てちまえばいいじゃないですかィ」
「そいつができれば苦労しちゃいねえ。気が付いたら厠や風呂にまで持っていっちまう始末だ。剝がそうにも剝がれねェ鍛冶屋のじじいはこんな時に限っていやがらねェし」
「するってーとなんですかィ、近藤さんと喧嘩したのもそいつのせいだと?」
ストローから息が流れ沖田の飲んでいるオレンジジュースがぶくぶく音を立てる。
「…そうならいいんだがな。」
「土方さん、こんな時にうかうかしてたら伊東さんに副長の座、奪われますぜェ。あとアンタのお気に入りもね」
「ふっ、それどころじゃねーよ。俺はこんなになっちまってからすでに10を超える局中法度を犯してる…明日にでも伊東から切腹の申し渡しが来てもおかしかねーよ」
煙草を灰皿に押し付け、席を立つ。
「今のヘタレた俺じゃ呑みかねねェ。お前も俺なんかといると伊東に目を付けられるぞ。」
そういい手を上げる土方を沖田はじっと見つめる。
武州から一緒に江戸まで来た仲だ、沖田にだって心配する気持ちくらいある。
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作者名:あ | 作成日時:2024年3月6日 2時