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「玉がどうしても飲みたいって言うからさ」
『関係ありません!止めて下さいよ、もう!』
「ははっ、Aちゃんって仕事熱心でいいよね。俺そういうの、すげー好き」



…は。



『へ…?』
「ん?ほら、どっち座る?玉の隣は危なそうだから俺の横おいで」


ぽんぽんと座布団を叩く。



好きって言った?


…いや、待て。仕事熱心なのが好きなだけで、私の事ではない。どうした私。急に焦って。らしくない。

後輩の鈴木くんに言われてもスルーするのに。


ああ、彼がアイドルだからか。やっぱり顔は大事だよね、うんうん。



「Aさん?何か考え事?」
『あ、いや…すみません。横失礼します』
「ふは、どーぞ」


もうヘロヘロな玉森くんの戯言を無視して、北山さんの横に座る。


少しだけ心臓が速いのは気のせい。ばかみたい。



「Aさんは何飲む?」
『え、何飲むって…ウーロン茶で』
「えー!何言ってんの!Aちゃんはビール!」
『玉森くん。私今仕事中なんだけど?』
「すみませーん!生ひとつ!」


いつの間にか呼ばれていた店員さんに、玉森くんは伝える。ダメだヘロヘロ人間だもう。



「Aさん、お酒飲めるの?」
『まあそれなりには』


北山さんが横から聞いてきた。


「じゃあ食べ物は?何が好き?」
『え〜…お酒のつまみで言うなら、焼き鳥とか?』
「んふ、これは飲める口だね?」
『…さあ』


なるほどね〜って北山さんはニコニコする。


「俺砂肝好きなんだけど、Aさんは何が好き?」
『私も砂肝好きですよ。あとはつくねとか』
「つくねかー。美味いよな」
『小さい頃はつくねばっかりで、1回飽きてしまったんですけど、大人になってまた食べてみたら美味し…って関係ない話を…すみません』
「ええ?謝るところあった今?」


ははって笑う。


玉森くんにLINEで質問責めにあった時は面倒だと思ったのに、北山さんに聞かれたらすんなり答えてしまった。さらに無駄な話まで。

聞き上手で話し上手な人なのは分かってたけど、なんか前回よりも雰囲気が柔らかくて話しやすい。



「あ、ほら生来たよ」
『ありがとうございます』
「じゃあ乾杯」
「かんぱーい」
『…かんぱい』


ガラスの音が響く。


ぐびっと飲むと、横で北山さんが少し微笑む。



「飲みっぷりいいね」
『…もう打ち合わせ諦めましたからね。玉森くんのお金で飲んでやります』
「ふはっ、付き合いますわ」


好きな食べ物お食べ、ってメニューを渡される。

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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時

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