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「Aちゃん!」


リハーサル室を出て廊下を1人で歩いていると、玉森くんが走って来た。正直今は誰とも話したくない。悪くないのに、皆を責めてしまいそうになる。


『…たまもりくん』
「Aちゃん…ほんっとうに、ごめん……」
『……』
「俺今考えれば、酷い事をAちゃんにお願いしてた。こんなの盗作と何も変わらないよね…本当にごめん」

玉森くんは深く頭を下げた。


「俺…ミツと横尾さんに怒らないでってちゃんと言う。我慢してって。やっぱり事務所関係ないAちゃんを、我慢させるのは違う」
『でも宏光は多分、ふうかちゃんに怒っちゃうよ』
「それならもう、それで良い。とにかくAちゃんに悲しい思いさせたくない」
『…私は、事務所の事は何も分からない。上からの圧がどれくらいなのか、玉森くん達がどれくらい危ないのか…私は何も知らない。でも、キスマイの皆さん…いい人達だから。私の我慢で丸く収まるなら、これくらい』


平気だよ、って言おうとした。






『………ひろみつ』


詳しく聞かせて貰ってもいい?と玉森くんの肩を叩く宏光。いつからそこに。

玉森くんも、わ!って驚いてるあたり、知らなかったらしい。逃げ場を無くした私たちは、空き部屋に入った。





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「で?」


小さく座る私と玉森くんの前に、冷たい目をした宏光が立っている。


「隠してる事吐いて」
『……えっと』
「Aちゃん、俺が言う」

玉森くんが顔を上げた。


「…さっきのデザイン案は、全てAちゃんのもの。俺が、Aちゃんに書いて欲しいって頼んだ」
「別にAが書いた事は問題じゃねーよ。なんでふうかが書いた事になったか、が問題だろ」
「…それは」
「俺がふうかに怒ると思った?痺れ切らすと思った?」


玉森くんはまた俯き、小さく頷いた。宏光はため息を吐く。


「…それは俺も悪かった。最近イライラしてたし、それも気を遣わせてたよな。でもな、だからって。Aを巻き込むのは違うだろ」
「…うん、ごめん」
「それにAも。自己犠牲の精神辞めろ。もっと我儘言え」
『…うん……でもね』


なに?って宏光は言う。少し冷たい。


『お願いだから…この事はふうかちゃんには言わないで欲しいの』
「は?まだそんなこと言ってんのか」
『だって…事務所との問題もあるし、林田さんだって仕事辞めさせられちゃうかもしれない。私が我慢すれば良いだけだから…ね?』

宏光にバレた以上、もう頼むしかなかった。



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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時

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