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「よし、修正はこんなもんね。ふうかの代わりに4つも制作してくれて本当にありがとう。私はキスマイの担当離れちゃったけど、これからAちゃんが居るなら安心ね」
『いやいや、これからだなんて。私は今回限りです。貴重な体験させて頂きました。こちらこそ、ありがとうございました』
そんな悲しいこと言わないで、なんて前担当デザイナーの林田さんは眉を下げる。
藤ヶ谷さんの協力もあり、無事に1週間で4着の制作を終えた。最後はやっぱり焦ったけど、ホットミルクを飲むと自然と落ち着けた。本当に感謝しかない。
あとは皆にチェックしてもらおうか、と林田さんとリハーサル室に移動する。やっと終わったーなんて伸びると、林田さんはクスクス笑った。
「Aさんって思ったより、柔らかい人よね」
『ええ…最初は堅かったですか?』
「堅いっていうより…堅苦しい感じ?」
『同じじゃないですか』
「んーなんて言うんだろ。その堅さは、Aさん自身を苦しめてるような堅さっていうか」
なんか上手く言えないやって笑う林田さん。
堅"苦しい"…私は自分の首を自分で締め過ぎてたのかもしれない。面倒な女って言葉の呪縛から、逃げられなかったから。少し締まりが緩くなったのは、きっと。
「ま、良い意味で変わったってこと」
『ふふ、なら良かったです』
Aちゃんは笑った顔が可愛いから、もっと笑いなよ!そんなこと言われると、笑いづらいです!なんて林田さんと話しながら角を曲がると、リハーサル室前で壁に寄りかかるふうかちゃんの姿。
「ふうか、何してるの?」
「あ、林田さんお疲れ様でーす。で、Aさん、終わりました?」
私の前に歩いて来たふうかちゃんは、私が抱えるファイルをじっと見る。…忘れてた。ふうかちゃんが仕事をしていると思っている皆の為に、このデザインはふうかちゃんが制作したって事にしないといけないんだった。
私はそっと手元に視線を戻す。…私のデザイン。
「ふうか。終わりました?じゃないでしょ?Aちゃんが貴方の代わりに書いてくれたのよ?お礼くらい」
「林田さん。次の移動先、もうないですよ?」
被せるように言うふうかちゃんの言葉に、林田さんは黙り俯いた。林田さんがキスマイ担当から外されたの、やっぱりふうかちゃんのせいなんだ。
どこまでも親の権力を使って、自分の好きに動こうとする行動力だけは尊敬する。でも周りを巻き込むクズさには、反吐が出る。
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時