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鈴木と2人で飲んでた事許してやるから、時間作れよ!と私に言いながら、藤ヶ谷さんと部屋を出て行った宏光。

何が許してやる、よ。私が浮気なんて許さないって言ってるでしょ。


隣に居るふうかちゃんは、2人に元気よく手を振る。ドアが閉まった途端、辞めたけど。


「…で、Aさんでしたっけ。どういうつもりですか?仕事奪う気ですかね?」
『…はい?』
「デザイン制作して、何のつもりですかって聞いてるんです。貴方の分はもう終わってるでしょ?」


机の上に置いてある下書きをトントン叩くふうかちゃん。顔が怖いよって言いたい。

それに仕事奪う気ですか?って……私の休み奪う気ですか?


『…ちょっと言いたい事が分からないんだけど』
「だーかーら!今作ってるのって私の分の衣装ですよね。私の仕事奪うの辞めてください」
『いやいや…ふうかちゃんが制作しないから、私にこの仕事回って来たんだよ?ふうかちゃんがやってくれるなら、私休めるんだけど』


言いたい事が理解出来ない。


『期限も相当過ぎてるのに、皆さんのリハ見てたり…仕事奪ってないけど、正直奪われても何も言えない様な仕事しかしてないよね?』
「…生意気」
『生意気?どっちがかな?』
「私のお父さん凄い人なのよ、どうなるか」
『社会に出てまだそんな事言ってるの?』


事務所の皆様、我慢してるメンバーの皆様、そして玉森くん。ごめんなさい、下手に動くこと出来ないとか言いつつ、めちゃめちゃ口が動いてしまいました。

私の言葉に、更に苛ついた顔をするふうかちゃん。


「…もういい。私の仕事あげるわよ。結局、私がやった事になるだろうし?Aさんの頑張りが私のものになるならもういいわ」
『仕事奪ったって突っかかってきたのに…なんだそれ』


はあっとため息が出てしまう。
でも痛いところを突かれた。ふうかちゃんはこんな可愛い雰囲気の癖に、頭は回る子らしい。私が制作したって皆に言えない事、理解してるんだ。どこまで親の力に頼ってるのかしら。

でもそんな事で私は狼狽えない。自分の作ったデザインが、ふうかちゃんの物として紹介されるのは嫌だけど、宏光達が温厚に話を進められるなら、それで良い。


…私が我慢すれば、それで良い。


『…もう話終わったなら、皆さんのリハーサルでも見て来なよ』
「最後まで嫌味な人ね」
『お互い様でしょ』


ふん!と言って、くるっと入口の方に歩き出すふうかちゃん。バン!と閉まるドアを見て、またため息が出た。


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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時

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