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ここはこーして、あーして…あーでも、こっちの方が似合うかな…あ、でもこの布なら合うかもな…
部屋を移してもらった私は、だだっ広いスタジオの端で1人、とにかく描く。あーでもない、こーでもないって描きまくるしか、私に方法はない。考えるより動け、宏光が私が詰まってるときに言ってくれた言葉だ。
何でもいいから描いてみると、案外新しいアイデアがポンポン出てくる。それをひたすら形にする。
私の衣装は主役では無く、主役の補佐をするもの。いかに彼らを輝かせ、美しく綺麗に見せるか。その手伝いを衣装を通して出来るって、こんな素敵なことはない。
『んー…この曲に合う衣装……』
全部曲を聞かせてもらい、それに合う衣装を考えるのは思ったより楽しいし、好きだった。でも毎曲着替えるわけではない。上着を脱ぐ形もあれば、早着替えに特化した衣装もある。曲の雰囲気も、同じ系統が並ぶとはいえ、数曲に合った衣装制作は難しい。…やっぱり時間がかかる。
『……ちょっと可愛過ぎるかあ』
「ちょっと可愛過ぎるね」
『わ！！』
「あはは、本当に気付いてなかったんだ」
後ろから話しかけて来たのは、藤ヶ谷さん。びっくりして、変な線引いちゃった。
「スタジオ入りますよーって、声掛けたよ？」
『…すみません、全く気が付かなかったです』
「ふふ、集中力すごいね。でもこれはちょっと可愛い過ぎちゃう」
『ですよね、すみません』
30超えてるからなー俺らって笑う。相変わらず顔が整ってらっしゃる。
「で、何でAちゃんがデザイン制作？」
『え…！それは、あの』
「もうAちゃんの分は終わってるよね？」
『…いや』
「やっぱり…あの子仕事してないのか」
……マズイ、バレてしまった。もっと上手く誤魔化せよ、私！
「さっき玉とアイコンタクト取ってた理由は、これか」
『…観察力』
「Aさん、分かりやすいしね」
座ったままの私を見下ろす形で、ニコッと笑う藤ヶ谷さん。まただ…玉森くんも宏光も鈴木くんも、私を分かりやすいと言った。そんなに？って少し落ち込む。
「まあ俺らも限界来てるしね…特に北山と渉にバレたら面倒な事になるって話か」
『そこまで分かってるんですね…』
「あ、やっぱり？」
確信持てなかったけど、って意地悪そうに笑った。誘導尋問だ…！
どれくらい残ってるの？と聞かれて、1週間で4着です、というと驚かれた。流石に俺でも怒りそうだけど、って藤ヶ谷さんは頭を掻く。
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作者名：ナナシ | 作成日時：2021年12月16日 17時
