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「あー！玉森さーん！」
スタジオに入ると、聞いたことない声が聞こえた。
「あれ？その方は誰ですかー？」
茶色いで鎖骨あたりのふわっと緩く巻かれた髪が舞う女性。可愛らしい感じの…まあ、若くて、可愛い感じの。
「あ、この人はAちゃん。えっと苗字なんだっけ」
『…AAです。今回ライブのみデザイナー担当させて頂きます』
「あ…この方が。保住ふうかです！」
一瞬嫌そうな顔したの見逃さなかったぞ、とは言わない。微笑んどいた。やっぱりこういうタイプは、どこにでも居るもんだ。
「あれー？Aさんが居るー！」
「本当だ！お疲れ様でーす」
『お疲れ様です、二階堂さん千賀さん』
「相変わらず堅いことー！」
パタパタ奥から走ってきた2人に挨拶する私を見て、横で玉森くんが言う。
『玉森くん、私帰りますよ？』
「あはは、嘘だってー」
『…調子の良いこと』
「…2人は付き合ってるんですか？」
ふうかちゃんが、ぽつりと呟く。
他のメンバーも私に気付いたのか、近くに来てくれた。もちろん、北山さんも。
「付き合ってないよ」
『変な腐れ縁です』
「それは酷いけどね？」
「そうなんですね。なんかいつもより玉森さんの雰囲気柔らかくて、付き合ってるのかと思いました！」
「だって？付き合っちゃう？Aちゃん」
『冗談言ってないで、仕事！』
宏光の顔が見れない。…もう忘れるって決めたじゃんか。普通にしないと。
「Aさん、こんばんは」
『あ、藤ヶ谷さん。お久しぶりです』
「今日はどうしたの？」
『あ、それが』
「Aちゃんのデザイン案の少し見直し！今日の夜暇だっていうから連れて来たのー！」
は？って玉森くんの方を向けば、ごめんと口パクされる。…なにこれ、とりあえず話し合わせろって事？
『…そうなんです！少し修正する為に来ました』
「そうなんだね、いつもありがとうね」
『全然そんな』
「って事で早速Aちゃんやってねー！ほら、こっち！」
少し焦ったようにほらほらー！と私を押す玉森くん。スタジオの端にある席に座るよう言われた。さっき言ってたデザイン制作してる所って、もしかしてここ？音楽もバンバン流れるのに、気が散って仕方ないでしょこれ…。
『…で、どういう事』
「話し合わせてくれてありがとう…実はちょっとした問題があってね。これ言ったら面倒だから嫌って断られると思って言わなかったんだけど…」
なんなのその最悪な話の入りは。
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作者名：ナナシ | 作成日時：2021年12月16日 17時
