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『……私デザイン出来ないよ』
「あれ?元々デザイナー志望だったよね」
『…よく覚えてるねそんな事』
「そんな事?Aちゃんはデザインの話してる時、1番楽しそうだったよ」
玉森くんは私を真っ直ぐ見た。
小さい頃から洋服を作るのが夢だった。熊のぬいぐるみのとんちゃんに洋服を作ってあげたのがきっかけで、それ以来ずっと私の夢はデザイナーだった。
『それはもう、昔の夢だよ』
「そう?その割には同窓会でデザイナーの子と話してる時、顔輝いてたけどね」
『…よく見てるのね』
「あはは、まあね」
自分にデザイナーとしての希望が見えなくて、挫折した。夢から逃げて、でも少しでも関係のある職に就きたくて、布製品専門店の仕事に就いた。
結局私はいつまで経っても面倒臭い女だ。
「俺、昔からAちゃんが授業中に書いてた服が大好きだったよ。だから今回、やってみない?」
『…でも、個人の仕事なんて会社が許すかどうか』
「そうやって逃げると思って、会社にも話は付けてあるよ。ほら、あと不安な事は?」
逃げ道を封じられた。
『でも今の仕事蔑ろにしたくないし』
「それも大丈夫。会社に説明したよ」
また封じられた。
『……分かったよ、やる』
「んふふ、やらせて下さいって言わない所が好きなんだよね」
玉森くんは笑った。
北山さんは安心したように、笑った。
「もちろん衣装の生地も、Aちゃんの会社にお願いする。その代わりにAちゃんを約半年間貸してもらうって契約」
ざっと言うとね、と私に資料を見せた。断らせる気さらさらなかったらしい。
「今回、衣装デザインは俺とミツが担当なの。って言っても、ミツは少しだけ。それでも仲良くしてあげてね?」
「宜しくね、Aちゃん」
『…ちゃん付け辞めてください』
「ええ、玉はAちゃんって呼んでるじゃん」
北山さんは困ったように笑った。
私はもう、ちゃんを付けられるような歳じゃないですよ、って返す。
「まあ玉は高校からの仲だもんな…じゃあ宜しくね、A」
『……宜しくお願いします、北山さん』
私の返事に北山さんはまた、クスッと笑った。
この人の距離感はおかしいと、頭に記録した。
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時