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「ただの仕事相手?」
『…そうでしょ』
「A、いい加減にしろよ」
『いい加減にするのはどっちよ!』
ボタボタ落ちる涙。もうぐちゃぐちゃだよ。
『彼女居るくせに私と2人で飲んだり、家の下で待ったり。…仕事円滑に進める為に、そんな事までする訳?』
「なんなのさっきから、仕事相手とか円滑に進めるとか。俺が今まで会ってたのが、そんな理由だって言いたいのかよ」
『それ以外何があるのよ。彼女居るのに他の女に会う理由は!それとも何…浮気相手にでもしようとしてたわけ?』
こんな事言いたかった訳じゃない。しっかり話して仲直りしたかっただけなのに。
一度絡まりだした糸は、簡単には解けない。
「…Aの目には今、そんな風に俺が映ってるの?」
『だってそれ以外…何があるのよ。私が浮気されてた事も、イケメンが嫌いな事も!全部知ってるのに…全部知ってるのにどうして』
「ひろ…ちょっと騒ぎ過ぎだよ」
「菜穂」
『…もう離して』
降りてきたのか、エントランスで待ってたのか。菜穂さんが出てきた。
宏光の事を、ひろって呼んでる。宏光は菜穂って呼んでて、もうそれだけで胸がはち切れそうだった。
宏光が掴む私の腕を無理矢理振って、離れる。
自分から振り払ったのに、胸がぎゅっと締まった。
…疲れた。やっぱり、恋愛は向いてないのかもしれない。
宏光が看病してくれた。
怒って帰った。
エントランスで待っててくれた。
彼女が居た。
勝手に一喜一憂して。……馬鹿みたい。
…もう、いいや。
「ちょっと待てってば」
『もう話す事なんて何もない』
「A!」
『…さようなら、北山さん』
背を向けて歩き出す。
もうどうでもいいって思ったのに、溢れる涙は止まらなくて、たった100mも満たない道で何度も止まりそうになった。
宏光から見えなくなったら、思いっきり泣こう。
これから沢山現場で会うんだし、私は今日で想いを断ち切ろう。もしかしたらただの仕事相手なのに、あーだこーだ言って…気持ちがバレてしまったかもしれない。
でもいい。もうどうでもいい。
強がりで言った『北山さん』に傷付いたのはきっと、私だけだ。
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時