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年度切り替えによる引き継ぎ、お客様新生活による受注、ライブのデザイン案、打ち合わせ、作成の立ち合い…昨年の3月中旬とは比べ物にならない忙しさで駆け回る。

5月に迫るライブに向けての仕事が、会社の繁忙期とドンピシャに重なるのは運がいいのか悪いのか。…もちろん後者だ。


「Aさん、おはようございます!」
『…あ、おはよう、鈴木くん。今日、鈴木くんの営業先に着いて行く事になったから宜しくね』
「え?もう僕1人で行けますよ?」
『違うよ。前担当の林さんがご結婚されて、そのまま寿退社するらしいの。だから最後にご挨拶に行くのよ』
「……」
『鈴木くん?』


パソコンから視線をずらし、鈴木くんを見る。なんか不安そうな顔してるんだけど。


『…別に鈴木くんの仕事奪うとかじゃ無いよ?』
「分かってますよそんなこと!」
『…だよね、え、じゃあその顔は何?』
「Aさん、倒れますよ?」
『え?』
「Aさん!最近働きすぎです!」
『ちょ、声が大きい!』


周りの視線を…集めてなかった。危ない。


「最近休んだのいつですか」
『……2週間前?』
「3週間前ですよ、そんな計算も出来なくなってるって相当ですよ」
『ちょっと数え間違えただけじゃない。気のせいよ』
「いーや!気のせいじゃ無い!」


だから声が大きい!と注意すると、シュンとした。


『…心配、してくれてるのね。ありがとう』
「Aさん、最近声掛けても1回じゃ反応しないし、同期も先輩も皆さん心配してますよ」


クゥーンと鳴きたげな顔で言う。鈴木くんはゴールデンレトリバーっぽい。ちなみに玉森くんは、んー…なんか白っぽい大きな犬?


「そうやって話してる途中に、どこか飛ぶのも最近多いです」
『…飛ぶって、あは』
「Aさん、1月末辺りから雰囲気優しくなったのに…最近またトゲトゲしてます」


トゲトゲしてます、…そんなに余裕なく見えてるのね。ちょっと心に刺さる。


1月末、確か宏光と家で飲んでた辺りかな、とぼんやり思い出す。自覚したくない想いに気付いたせい?こんな理由で雰囲気変わったなんて、恥ずかしくて穴に入りたい。

宏光と2月は頻繁に飲めてたけど、3月になってから私が忙しいせいで飲めてない。今月になってからもう5、6回は断ってる。先週仕事場で会ったけど、なんか少し拗ねてたし。断りたくて断ってないわよ!と叫んでやりたかった。


「ほら、また飛んでますよ」
『…ごめん』

ここまで後輩に心配されるなんて。



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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時

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