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はいはい、まあ適当に座って、と奥の部屋に入っていった。ひろーいリビングにポツンと立つ私。こんなに近くのマンションなのに、ここまで違うものか。
どうすれば良いか分からなくて、ちょっとウロウロする。
わ、窓から見える景色も全然違う。
『…東京タワーも見えるの…?』
私の部屋は3階だし、そもそもマンション自体が小さい。それに比べてここはズバ抜けて大きい。
住む世界が違うってこういう事を言うんだなあ、なんてぼんやり思う。
「景色良いよねここ。今日みたいに晴れた日は特によく見える」
『…そうで…だね』
「んふふ、まあ、1人だと共有出来る人も居ないし、特に何も思わないけどね」
タオルで頭をガシガシしながら、宏光は言った。
1人…って彼女さんとか居ないのかな。まあ別に…関係ないけど。
宏光がソファに腰をかけたので、私も離れて浅く座る。夜は飲みたいし、さっそく打ち合わせするか!の声で、打ち合わせが始まった。
あーでもない、こーでもない、そこは変えたい、いやでもそれだと、あーそっか、どうしよっか、てかそれ焼きそばパン?食べたい、どうぞ、それでこれはどう?なんて調子でポンポン進む。最初はぎこちなかったタメ口も、慣れると話しやすくなるもんで。
提案も意見も、お互い言いやすくなっていた。
これも宏光の戦略のうちなのかもしれない。仕事を円滑に進める為に、仲良くする。人の懐に入る。8年近く営業職をやってる私でも、未だに悩むのに。彼は自然にやる。仕事熱心で真っ直ぐなところ、本当に尊敬する。
「ま、とりあえずここまで進めばいいっしょ」
『そうだね、次回また新しいデザイン案と生地持ってくるね』
「ん、よろしく」
気づけば外は暗くなり、時計の短針は6を過ぎていた。
「この後の飲み、時間分からなくて予約してないんだけど、どうする?」
『だって一般的なお店は入れないのよね?』
「んーまあ、そうだな」
『じゃあまた今度だね』
「…Aって淡白」
『え、だってどうするのよ』
むーって口を尖らせて、綺麗な目で私を見る。
「家で飲めるじゃん」
『家?誰の?』
「俺の」
『…いやまあ飲めるけど』
「えー俺が襲っちゃうって心配?」
『いやその心配はないけどさ』
だからその心配をして!なんて騒ぐ宏光。
いやいやジャニーズが私なんかに手出さないでしょ、とは言わない。
「あ、また髪を耳に掛けた」
『え、』
「何を隠した?何を言おうとした!」
ジロって私を見る。
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作者名:ナナシ | 作成日時:2021年12月16日 17時