丗伍 ページ36
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「お願いします、教祖様。どうか私を極楽へ導いてください。」
彼女が鬼に襲われてから、俺はあの屋敷に出向いていない。一日中信者の話を聞いては人を喰っての繰り返しだ。あぁ、退屈だ。
目の前にいる死に損ないの婆さんは、俺に頭を下げて極楽へ極楽へと必死に頼んでくるが、可哀想なことに俺は建前でしか導いてやれない。
哀れだ。人間は本当に、弱くて小さくて。信仰に縋らなければ生きることすら出来ないなんて。
「……なぜそこまでして極楽を望むんだい？」
幾人もの信者に聞いたこの問い。正直皆つまらない答えばかりだ。苦しいだの、辛いだの。当たり前だろう、世の中にある善と悪は決して共存しない。
いくら己が正しい道を行こうが、その反対に悪を極めて甘い汁をすすり貪るやからは大勢いる。
結局、極楽なんて正しき道を的外れにしたようなもの。
悪を許せぬ善が地獄を作り、死後に善は報われるという勝手な思想で極楽を生み出した。人間の傲慢さが、全てを生み出す。
悪を極めることが悪ならば、醜い嫉妬や憎悪を宿す善もまた悪なのだ。
「……夫には先立たれ、私は持病が進行しております。」
「持病ねぇ。薬は飲んでいないのか。」
「えぇ……。数年前までは、少し離れた山の麓にある薬師に薬をお願いしておりましたが……急に、亡くなられまして。」
「山の麓の薬師ね。」
そこで話は途切れたかに思えた。しかし、老女は複雑そうな顔をして、また次の言葉を紡ぎ出す。
「若く腕のある薬師だったのですが、今は娘さん一人になってしまい。」
「……ほぅ、その薬師には娘がいたのか。」
「えぇ。白い肌に白い髪。それはもう、天女のように美しい子でしたよ。」
白い肌に白い髪。彼女に似ている。ぼんやりと脳裏に浮かんだ整った顔立ちの娘と言えば彼女くらいか。
山の麓に住んでいるというのも似ているが……。
いや、これは似ているのでは無い。
「……その薬師の名は？」
「確か……
ふと思い出す門口にさげられた名。あぁ、そうか。やはり人違いでは無かったのか。
「済まないが、その薬師について教えてくれないか。」
「……私は、構いませんが。もうその薬師は他界して
いるので会うことは叶いませんよ？」
「あぁ、構わないよ。少し、興味がわいただけだからね。」
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あるでんと(プロフ) - ぱんさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。風邪は年末から年始にかけてすでにひいたので大丈夫だと思います笑 (2020年1月15日 23時) (
レス) id: 484fc6b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - とても面白いです！続きを楽しみにしてますが、すんごい寒いので体調に気をつけてくださいね！ (2020年1月14日 17時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - あさん» 童磨のキャラブレがとても心配だったので、そう言っていただけて嬉しい限りです。完結までは私のペースになってしまうと思うのですが頑張ろうと思っているので、これからもぜひ、よろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あるでんと(プロフ) - 狂狐さん» 返信遅れて申し訳ありません。勿体ないお言葉、本当にありがとうございます。とても嬉しいです。少しずつ更新していこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 7時) (レス) id: ee9413cc7b (このIDを非表示/違反報告)
あ - 童磨さん最高です。すごく面白かったです、これからも応援させていただきます。 (2019年10月24日 17時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるでんと | 作成日時：2019年7月20日 15時
