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「そうやってはじき出されたものは、無機物だろうが人間だろうが大抵はすぐ消える。ブラックホールに吸い込まれるようなものだからね」
ブラックホール。光さえ飲み込んでしまう天体…だっただろうか。
「けれどこれもまた珍しいことに、君は彷徨い…次元をも超えて、パラレルワールドでもない全くの別世界に飛ばされてしまった」
パラレルワールドというのは、並行する世界のこと。そもそも私が来たこの世界は、創作の世界…本来は存在しないもののはずだ。
「人間が作り出すものはね、とてつもないパワーを生み出す。誰かが物語を生み出した時…いや、頭の中で想像したその瞬間、別の宇宙のどこかでその物語が新しい世界として生まれるんだ。けどそうやって作られる世界は、辻褄が合わなかったり大雑把だったりしてあやふやなものばかり」
けど君がこの世界に来たことで、あやふやだったものが軸を持った。
「…軸？」
「さっき言っただろ。人間ってのは、世界すら作り出すパワーを持った強い存在だって」
『君が存在するイナズマイレブンGOの世界』が、本来の『イナズマイレブンGO』の大きな軸と混ざり合ったんだ。
「ねえ、私…話の半分も理解できてないかも」
「いいよ、理解できなくて。ただ話しておいた方がいいと思っただけだから」
君が分からなくても、この事実は揺らがないから。
「色々聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
しばらく黙り込んだ私を、ゴーストはずっと待っていた。また「ああ」とぶっきらぼうに返事をする。
「私の戸籍や学生証を作ったのは、ゴーストなの？」
「そうだ、俺がやった。無戸籍で路頭に迷うなんて、君からしたらたまったもんじゃないだろ」
「じゃあ、あの制服も？」
少しの沈黙の後、「気に入らないなら自分で買って」と突き放されてしまった。ふは、と吹き出してしまう。
「違うよ…ありがとう、あなたは優しいね」
照れ隠しだろうか。ゴーストはふんと小さく鼻を鳴らした。
「でも、そんなことが出来るなんて…ゴーストって偉い人か何かなの？」
「いいや全く」
「え」
「君が飛ばされてきた直後、その衝撃で世界はブレッブレだったからな。それを利用して『弄った』んだ。初めてやったけど案外うまくいったな」
平然と言ってのける彼とは反対に、私は動揺を隠せなかった。
「な、なんで…もし失敗してたら」
「消えてたな。俺が」
「なんで、そこまでしてくれるのっ？」
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作者名：飯 | 作成日時：2021年9月2日 22時
