□thirty ページ32
- 諏訪部 side -
無事に収録が長引く事もなく予定の時間に終えた
ポケットからすぐ携帯を取り出し電話をかける
駅で待ち合わせするつもりだったが
声を聞いた途端いてもたってもいられずに
車に乗り、迎えに行くと伝えた
早く逢いたい
今思えば恥ずかしくもあるが、
その時はもう何も考えられずに
理性の赴くままに従う
目的地までの道のりが遠く感じる
こういう時に限って信号にひっかかる
目的地に着き、電話をかけるが
約束より少し遅れたためかなかなか繋がらない
気が変わったのか、と不安に駆られていると着信音が鳴る
すると後ろを見てと言われ、言葉のままに振り向く
その姿を見ると、胸がきゅっと締め付けられた
懐かしい面影を残しつつ、それでありながら大人びた姿
また、綺麗になったんだな…
愛おしくて、今にも駆け出して抱きしめたい衝動に駆られるが拒まれたら…なんて不安も同時にこみ上げてくる
たった数メートルの距離がもどかしい
ゆっくりと彼女はこちらに近づいてくる
目を合わせると照れくさそうに微笑んだ
もう理性なんてその瞬間吹っ飛んでいた
その場を駆け出し、抱きしめる
言葉も出すこともなく
ただ、ただ、抱きしめていると、
彼女もぎゅっ、と抱きしめ返してくれた
「おかえり、A…」
『た、ただいま…っ』
あーあ、また泣かせてしまった…
だけど今はそんな泣き顔ですら愛おしい
はっ、と我に返り身体を離すと、
ポケットから取り出したものを彼女に渡す
「はい、落とし物」
『え…これって……』
「やっぱ覚えてないか…以前駅のホームでぶつかった時にバッグ落としたの覚えてない?」
『あの時…不審者が拾ってくれて…』
「ちょっとそれ俺なんだけど(笑)」
彼女は顔を上げ固まっていた
「拾い上げた時はもう姿がなくて渡すのが遅くなっちゃったけど…ごめんね」
彼女はクマのストラップを再びバッグにつけ直す
『ありがとう…』
「それでは、こちらへどうぞ お姫様」
車内へエスコートする
キザすぎたかな?なんて心配するも
彼女の顔は真っ赤になっていたので良しとする。
まだ顔が赤い彼女を横目に車を走らせた…
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作者名:梓音 | 作成日時:2017年4月30日 13時