ただ、ただ、愛おしくて… (ページ14)

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□thirteen ページ14

- 有美 side -

それから毎日のように公園で遊んだり
家に招いた時には、私のお母さんも
Aのお母さんも口を揃えて

〝いい子だわあ…〟

と感心してくれていた。

当時の順兄は22歳で、９歳の私たちから見れば
お兄ちゃんのような存在で

毎年私達の誕生日には
プレゼントとケーキをくれた。

遊園地にだって、水族館にだって、
順兄はどこへでも連れて行ってくれた

本当の家族みたいで、嬉しかった

中学へあがり、部活などでAも私も
多忙な日々を送ることになる

順兄もお仕事が忙しいみたいで
頻繁に遊ぶことも少なくなっていたが

それでも必ず週に１度は会いに来てくれる

そんなある日、Aから相談を受けた

『順兄のことが、好き…かもしれない…』

Aは有美も順兄のことが
好きなんじゃないか…

と、不安そうに言ってきたが
本当にお兄ちゃんとしか思っておらず
同じクラスに好きな人はいる

「もちろん応援するよ！」

そう伝えると少し照れた顔で嬉しそうに

『ありがとう…！』と、言った

今でもあの時の顔は忘れられない。

それからというものの、
３人で遊ぶ時は私だけ早めに帰り
少しでも２人っきりで楽しんでくれたら、

そう思っていた

時は15歳の春…Aの家に遊びに行くと

私の２人っきり大作戦の効果があったのか

『有美～！！順兄に大きくなったら

結婚しよって言われたよ～！』

「え、ほんと？やったじゃん～！！」

『あ、でも苗字知らないんだった！

今度会ったときに聞かなきゃ♩』

「そういえば私も聞いてなかった～。聞いたら教えてね～！」

自分の苗字変わるのはあと何年後かな～と

幸せそうに呟く姿を見て、思わず顔がほころぶ

すると家に１本の電話が鳴る

『あ、電話だ。有美ちょっと待ってて～』

そう言ってAは受話器を取りに１階へ降りた

部屋に残された私は１つの違和感を覚える

いつもならこの時間はおばさんがいて
飲み物やお菓子を部屋に持ってきてくれる

珍しく今日は姿を見ない。

買い物にでも行ってるのかな…と
思いながら窓の外を眺めた

「綺麗な夕焼け……」

それにしてもなかなかAが戻ってこない

不思議に思った私は１階へ様子を見に降りる