349*紅桜編34 ページ49
体が海へと傾く中、彼女はそんなあたしを見て目を見開いた。
神楽ちゃんがあたしのその言葉を理解したのと海へと体が触れたのは……
ほとんど同じであった。
「船を出すぞ。
もうここにいる理由もねェ」
晋助のそんな言葉が頭の片隅に聞こえて、次いで船が港から離れていく。
その中であたしはさっきの位置で立ち尽くしていた。
もう姿は見えないというのに海をずっとずっと凝視していた…──────────
*
side─H─
“すぐに戻ります”
そうメッセージを送ってきたアイツは一日経っても屯所へ戻ってくることはなかった。
「まだなんの連絡も無しですかィ?」
「そうみてぇだな。
ったく……辻斬犯がうろうろしてるって時にアイツは……」
「その辻斬犯にザクッと殺られちまったんじゃ?」
「話してる内容と表情が合ってねぇよ!」
地道に捜索を続けるものの手掛かりは無し。
「……冗談でさァ。
……あの夜……オレがAさんを一人で見廻りに行かせたからでィ」
辻斬犯の通達を受け、出動したオレ達。
最後にその姿を見たのは総悟だった。
「それがAの失踪に直接関わってるとも言えねえだろーが」
「関わってねぇとも断言出来ないでさァ」
「あんま変な風に考えて突っ走んなよ。
動くのは確実な証拠を掴んでからだ」
「……分かってまさァ」
もう何度も聞いて呆れたという風に返事をされて止まっていた足を動かす。
今日も夜の見廻りへ出ているのだが、数日前とはまた違った静けさがあった。
「にしても静かですねェ」
「あぁ。
前みてえな不気味さは無くなったな」
戦場へいくらか繰り出していれば周りの気配を察することは容易い。
それは総悟も同じように感じ取ったのか歌舞伎町の街はいつものような静けさに包まれていた。
「そういやァ、最近辻斬りの被害がピタッと止まりやしたねェ」
「……確かにそうだな」
「あの日、歌舞伎町の一角が荒らされてやしたのは辻斬犯の死滅を意味するんじゃ?」
「それも一理あるかも知れねぇな……」
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モコ(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます。 ただいまストーリーの作り貯めをしておりましてもうしばらくお待ちくださいm(__)m (2017年5月13日 17時) (レス) id: f3c615ea45 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 疲れたらゆっくり休んでください。 (2017年5月12日 16時) (レス) id: 4d82223b28 (このIDを非表示/違反報告)
モコ(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます! こんな作品にそのようなことを言って頂けて嬉しいです(/ー ̄;) 現状は全快といったところなのでこれからまた更新頑張ります♪ (2017年4月10日 19時) (レス) id: f3c615ea45 (このIDを非表示/違反報告)
零 - いつでも待ってます。だから疲れたら休んでください。体壊したら元も子もないですから。 (2017年4月10日 12時) (レス) id: 4d82223b28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モコ | 作成日時:2017年3月17日 6時