345*紅桜編30 ページ45
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「……やっぱり……このままじっとしてちゃ……ダメだ!」
晋助の目的が幕府転覆と分かればじっとしている場合ではない。
もしもの場合と仮定して色々と船内の逃げ道を頭に叩き込んでからあたしはあの紅桜が保管されている部屋へ。
晋助の目的が幕府転覆ならあたしの目的はもちろん紅桜撃滅のため。
しかし、そのあたしに立ちはだかるように……
「おや、こんな時間にばったり会うなんてねぇ。
急ぎの用事でもあるのかい、お嬢さん」
「に……似蔵……」
目の前に現れた似蔵。
そしてその右腕を見て、あたしは愕然とした。
右腕はほとんどなくなっており、激しい出血をしていたことは一目瞭然だった。
「これかい?
まぁ右腕なんてものはとっくの昔に紅桜にやってしまったからねぇ」
あたしの視線に気付いたのか似蔵は失った右腕を見てもなお、満足げに嗤う。
「紅桜……完成してたの……!?」
しかも、既に実用されてしまっていたのだ。
似蔵がここまで追い詰められたということは相手はなかなかの力量を持つ者だろう。
そしてどうやらあの日、晋助の見知らぬ男が交わしていた会話はどうあれ、紅桜自体はフェイクだったのか。
本当は紅桜はもう完成していて似蔵の体に組み込まれていた。
「……そんな腕で果たして幕府なんて転覆できるもん?」
「やるさ、それがあの人の望みならね。
この紅桜なら江戸を火の海に変えるなんて容易い」
「……そう。
それが似蔵、あんたの覚悟ってんならあたしはあたしの覚悟を貫く」
江戸を火の海に変えるならあたしはここで……
「似蔵、悪いけどあんたの好きにはさせられない」
そう静かに宣言して愛刀に手をかけた。
それはあの日、佐倉があたしへと渡してくれた妖刀。
「ほォ。
なかなか良い刀を持っていたもんだね、お嬢さん?」
珍しいもので敵地に乗り込んだというのに晋助はあたしから武器を奪わなかった。
刀どころか何も奪わず、のこのことこの根城へ招き入れた。
あの攘夷戦争を切り抜けてきた頭がキレる晋助のことだ。
こうなることは分かっていたはず。
いや、分かっていたからこそ奪わなかったのだろうか……?
そんなこと今は考えるだけ無駄、か。
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モコ(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます。 ただいまストーリーの作り貯めをしておりましてもうしばらくお待ちくださいm(__)m (2017年5月13日 17時) (レス) id: f3c615ea45 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 疲れたらゆっくり休んでください。 (2017年5月12日 16時) (レス) id: 4d82223b28 (このIDを非表示/違反報告)
モコ(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます! こんな作品にそのようなことを言って頂けて嬉しいです(/ー ̄;) 現状は全快といったところなのでこれからまた更新頑張ります♪ (2017年4月10日 19時) (レス) id: f3c615ea45 (このIDを非表示/違反報告)
零 - いつでも待ってます。だから疲れたら休んでください。体壊したら元も子もないですから。 (2017年4月10日 12時) (レス) id: 4d82223b28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モコ | 作成日時:2017年3月17日 6時