56*妖刀編33 ページ6
「……楓が幕臣に殺されたというのなら私も同じ道を辿りたい。
護れなかった咎として……」
「……あんたまさか……討ち死にでもする気?」
「……まさか。そんな崇高な言葉で表せるものではありませんよ」
こんなこと……償いにもなりませんからね。
ただの……自己満足とやらですよ。
また……そうやって佐倉は哀しそうに笑った。
「……はぁ。何それ?
結局、未練タラタラなだけじゃん」
くっだらない。
そう呟いて、あたしは再び刀を鞘へ収めて強く握り締めた。
「なら、あたしは佐倉……あんたを止める。
復讐だか何だか知らないけどね……」
俯いて、向こうの隙をつき。
地を蹴り上げ、佐倉が反応するよりも早く刀の持つ手を鞘で叩き上げた。
不意の攻撃を防ぎ切れずに舞った佐倉の刀に手を伸ばして掴み取る。
そして、手にした佐倉の刀を右肩に突き立てる。
「そんなもん誰も望んでない!!
あんたには、この刀が泣いてること……
この刀が叫んでいること……
何にも分かろうとしていない!!」
肩に刀を刺したまま佐倉の身体を塀へとぶつける。
激しい動きに舞った血が、返り血となって頬に付着した。
「……この刀が妖刀になったのは……
あんたの分まで怨みを取り込んだから!!」
本当はただの刀なのかも知れない。
それでも、あたしは確かにこの刀から聞いた。
『……お願いだから……。
もうこんなことを……しないで……!』
哀しい……心からの叫びを。
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作者名:モコ | 作成日時:2016年3月26日 21時