95*セピア色の思い出 ページ45
「明日もこの三人で松陽の部屋におやつを求めて突撃だー!」
「それを私の前で言いますか、A?」
「……あ。
で、でも元はと言えば松陽があんな美味しそうなもの独り占めしてるからだよ!
ねえ、銀時!」
「……オレに振るな」
「うっわー! 銀時も共犯者なのに!!」
「Aがどうしてもって言うからだろ」
「ちーがーいーまーすー!
二回目からは銀時もノリノリでしたー!」
「……気のせいだろ」
「ひっどー!!
松陽ー! 銀時が苛めてくる!!」
「ふ、はは。
仲が良いですね、Aと銀時は」
「仲良くないし笑い事じゃないー!」
『先生』の隣で小太郎も微かに笑っていたあの頃の記憶はセピア色へと変わっていた。
「小太郎も笑ってないでよー!」
それでも、心のずっと奥深くには鮮やかに残っていて。
時折、眺めてはまた大切に胸にしまう。
今も思い出すと、楽しくて……
どこか切なくなって屯所を出る足を早めた…───────────
*
「……はぁぁ……。
これで完全なる無職ってやつかぁ……」
まだまだお天道様が真上に在る時間。
人々が行き交う道に紛れ、ぽつり呟く。
いつもの時間なら、まだ身に付けているはずの隊服は真選組からおさがりの着流しを身に付けていた。
それは今日だけが非番なのではなく。
これから……ずっとそうだ。
あたしは……真選組にあった自分の居場所を……
遂に自ら手離した…──────────
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作者名:モコ | 作成日時:2016年3月26日 21時