92*大切なモノ ページ42
「……真選組も……大切です。
それと同じくらい……小太郎も大切で……
でも……選べない自分だから……ここにいる意味なんて……無い……」
「攘夷志士を捕らえることだけがここにいる存在意義じゃないだろう?
オレは心底Aちゃんの剣に惚れ込んだからなぁ!」
「……そうだとしても……
迷った者から命を落とすこの世の中に……
あたしみたいな人は一番要らないんです」
足を止めれば最期。
迷っても抗い続け、進む者にこそ初めて生の権利が与えられる。
そんな場面をあたしはずっと見てきた。
迷えば、死ぬ。
だから、あたしは迷いながらも死にたくなくて無我夢中で剣を振り続けた。
生き延びてまた逢いたい人が沢山いたから……。
近藤さんはそれ以上あたしに……
何も言わない。
何も聞こうとしない。
小太郎とどんな過去があったのか。
近藤さんなりに察してくれたのかも知れないが。
「少し話し過ぎましたよね。
……失礼します」
まだ何か言いたげだった近藤さんを置いて。
あたしは自室に戻ろうと踵を返す。
ここを……去ろうと決意しながら。
何も出来ないあたしがここにいるよりも、真選組に入りたいと今も思う人へ枠を空けることの方が有意義だ。
「……でも思ったより早かったな……」
いつかは去ろうと思っていた。
女人禁止の制度を破ってまで匿ってくれたというか、引き取ってくれて。
もう少し役に立ちたかったけれど。
そんな言い訳をして甘える訳にもいかない。
「……ありがとうございました。
お世話に……なりました」
誰に呟いたでもない言葉は……
淡く発光する月だけが……
ひっそりと聞いていた…────────
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作者名:モコ | 作成日時:2016年3月26日 21時