89*臨時会議 ページ39
「……ヤバいィィィイイ!!!」
現在八時十五分。
A、やってしまいました。
見事に寝過ごし。
寝るんじゃなかったァァァアアア!!
急いでマコトてしての自分に着替えて。
いつも以上に静かな廊下を一人爆走し、会議を行う部屋の障子をスパァァンと開けると……。
こめかみに青筋を浮かび上がらせた土方さんと一番に目が合った。
……視線だけで殺されるかと思った。
沖田は何か半寝だし。
近藤さんは困ったように笑うだけで。
あたしは隊士の皆様一人一人に苦笑の愛想笑いを浮かべながら、沖田の横に座る。
それを合図に近藤さんが、一つ咳払いをして口を開いた。
「今日、皆に集まってもらったのは他ならぬ桂のことについてだ」
「……Aさん、桂って知ってやすかィ?」
……桂って……
小太郎のこと……だよね……?
小太郎のことを知らないと思って補足してくれたのだろう沖田の小さい声さえ、返事をする余裕がなかった。
……小太郎が……どうなるのか。
嫌な予感がして、黙るあたしを訝しそうに見てくる沖田は視界に入らない。
「今日、歌舞伎町で目撃情報があった。
そこでだ。歌舞伎町の見廻りを強化して、今度こそ奴を捕縛する」
……捕縛……!?
近藤さんが熱を込め、放った言葉とは裏腹にあたしの身体はどんどん冷たくなる。
近藤さんの話によれば、前線を張る一人である沖田率いる一番隊を小太郎を取り押さえるために招集したそうだ。
一応、副長補佐として土方さんにつくあたしも呼ばれたらしいが……。
……小太郎を逮捕するなんて……
あたしには絶対に出来ない。
幼少期、同じ寺子屋で同じ時間を分かち合った大切な友人に……
手錠をかけるなど……
出来るはずもない。
むしろ、あたしだって今は違っても過去は攘夷志士だったわけだ。
捕まえるべきか。
逃げ道を教えるべきか。
あたしには、到底どちらかを選ぶなんて出来ない……。
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作者名:モコ | 作成日時:2016年3月26日 21時