53*妖刀編30 ページ3
「おい、A!
どうかし……」
オレの言葉を最後まで言わせず、急停車したパトカーからドアを突き破るような勢いで飛び出し走り出したA。
……やられたと、思った時には遅くて。
「ちょっ、Aちゃんっっ!?
よよよ万事屋の旦那ぁぁ……!!
これ、どーすれば……!」
土方に怒鳴られる光景を想像でもしたのか頼り無い声を上げて真っ青になるジミー君。
「……しゃーねえだろ。
アイツはこうと決めたら譲らねえ。
昔から……そうだったんだよ」
カーブミラー越しに見えたAの背中をオレは追いかけることもせず、ただただ見つめていた…───────
*
「……っはぁ、はぁ……!!」
もつれる足を叱咤して元来た道を逆戻り。
……どうしても、ここで引けなくて。
無力な自分が深く考えもせず招いた事に土方さんと沖田の手を借りたくなかった。
ここまでしてもらって……
申し訳ない気持ちが込み上げ、膨らんでいく。
今は、その気持ちだけがあたしを突き動かしていた。
身体は万全ではないが、さっきよりは自由を取り戻していた。
「佐倉ァァアア!!」
入り混じる隊士と攘夷志士の間をくぐり抜け、見つけた標的。
土方さんや沖田は佐倉が逃げるまでの時間稼ぎとして斬りかかってくる攘夷志士に手間取っていたらしい。
佐倉は、あたしの叫びに気付いたようで。
冷徹な殺人鬼の笑みを彷彿とさせる横顔をチラリと覗かせた。
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作者名:モコ | 作成日時:2016年3月26日 21時