460*ミツバ編46 ページ10
それから……
あたしはどれくらいミツバさんの過去を見守ってきたんだろうか。
たくさん、たくさんあった。
真夏の稽古後、近くの川で水遊びをする近藤さん、土方さん、沖田を優しく、時に楽しそうな笑みを浮かべながら見つめていたり。
定食屋で頼んだ品が何なのか分からないほどに唐辛子をかけ尽くすミツバさんと同じくマヨをこれでもかと盛り盛りに搾る土方さんに微笑むミツバさんの一コマがあったり。
稽古の差し入れにミツバさんが持ってきた真っ赤なおにぎりを三人は顔を引きつらせながらも食べて案の定、真っ赤なおにぎりより顔を赤くして死にかけていたり。
夜に武州の満点の星空を眺めては、これまたしょーもない喧嘩を始める土方さんと沖田を見て近藤さんとミツバさんが幸せそうに笑っていたり。
そこには沢山あたしが知らない……真選組の皆がいた。
当たり前だ。
当たり前……なんだけど、ね……。
近藤さんや土方さん、沖田のこと知ってるつもりでいたのに……。
まだまだ知らないことがありすぎて、三人が遠く感じてしまった。
それが……たまらなく淋しくて。
ずっと考えないようにしていた。
ミツバさんと知り合い、昔のみんなのことを知らない自分が気に食わなくて……三人をよく知るミツバさんが羨ましくて……。
それで一人部外者だって被害者面していじけてた……。
あたしってばこんな乙女みたいな ややこしい思考回路してないはずだったのになぁ……。
人の優しさや温もりを知ると余計に淋しさを感じてしまうのかも……しれない。
じゃあ……ミツバさんは……?
いつ、どのタイミングでこの三人と離れたのだろうか……?
ミツバさんが江戸へ来たのはつい最近のことだ。
それこそ、あたしよりずっと後に。
それまでどう……過ごしていたんだろうか……。
一人になったのかも……と想像するだけで息が詰まりそうだ……。
「みんな江戸で一旗あげるって本当?」
ミツバさんの過去の一部、武州の星空を眺めていた四人は次第に疎らになっていき……
近藤さんが帰った空間で、土方さんとミツバさんが二人きり。
夏の虫の声をバックにミツバさんは言葉を発した。
「……誰からきいた」
33人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
モコ(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます! 嬉しいお言葉をいただき執筆の活力になります(*^^*) 拙い作品ではございますが、これからも更新していきますのでよろしければご覧ください♪ (2023年2月14日 23時) (レス) @page7 id: 2d549f905e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 面白いです!続き待ってます! (2023年1月14日 18時) (レス) @page7 id: 74e925d2a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:モコ | 作成日時:2022年9月1日 21時