【銀魂】ひとりを愛した遊女の話

黒くて長い髪 ページ20

土方side
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ポタリ、ポタリと髪からつたり落ちる水滴をタオルで拭き取りながら机に広がる辻斬りの書類に目を通す。




2ヶ月前に見つかった遺体は4人。それがこの1ヶ月で16人にまで増えた。




2ヶ月前に比べると倍以上。殺し方も残虐になってきている。



真選組も総力を上げて捜索してるが中々尻尾が掴めず捜査は難攻していた。






「––––––––クソッ」






辻斬りの目的に検討が付かない。最初こそは刀を持つ男が殺されてたが最近は女が多い。



襲った様子も金目の物が盗まれた痕跡もない。ただ単純に殺しを楽しむ狂った野郎なのか。





「副長、ちょっといいですか」






襖の向こうから聞こえた山崎の声。返事をすれば頼んでおいた書類を渡される。





「副長の言った通り、殺された女性には共通点がありました」




書類には被害者の生前の写真が貼られていた。
書かれた共通点は、黒くて長い髪。そして





「生前、簪をしてたと」





女たちに簪はなかった。恐らく殺された後に奪われたんだろう。






「簪、か」






––––––あんまり考えたくはねェが、考えれば考えるほど奴に似ている。







「お前こいつのこと、どう思う」



「……似てますよね、2年前の辻斬りに」







2年前、半年間で100人以上の人間を殺した辻斬りがいた。



今回の辻斬りのように、最初は武士が多かったが徐々に女に変わり犯行の残酷さが増していった。





被害者の共通点は、いずれも黒くて長い髪に簪を挿した女。






「斬り方、剣の癖、残忍さ、犯行の習性、全てにおいて奴と似てます」







当時は市民からの不満の声が絶えず、決死の捜索で奴を突き止めた。




その時の一番隊副隊長が辻斬りに深傷を負わせたものの、あと一歩の所で奴を逃した。



それ以降奴が姿を現すことはなく、時間が経てば経つほど奴は死んだと言われるようになった。






「もしこの辻斬りがあの野郎だとしたら、尚更捕まえなきゃならねェ」






残された遺族の為にも、椿の為にも。

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