【ポケモン剣盾】黎明のポケモントレーナー (ページ40)

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季節間話3.聖夜1 ページ40

「メリークリスマス！はーい写真撮れましたー、ありがとうございます！！」
12月24日のクリスマスイブ。
ハロウィンさえ客寄せに尽力する職場に、当然休みがあるわけがない。
「どうして……冬にスカートを…」
Aは外気にさらされた膝を手で擦った。
タイツは着用しているが、サンタクロースのコスチュームは冬服の素材では作られていないようで外気が入るたびに寒い。

「メリークリスマス、オレ様と写真を撮るのか、いいぜ」
上の人間が気を遣ってくれているのか、あるいは何も考えていないのか公私混同をしないという信頼か、引き続きナックルスタジアムに配置され、恋人と知らない女性のツーショットを見せられている。
「もう何も思わないけどさぁ……はーい、撮りまーす！」
「Aさん、キバナさんの写真は私たちがやりますよ」
「あ、レナさん……あはは、気遣わせちゃってすみません。じゃあ私、ボールガイの方行っときますね」

他のスタッフに心配され、ボールガイの方に移動する。
ボールガイは良い。目に映るものが子供達ばかりになるから。
「あの、すみません、Aさんですよね」
子供に対応していると、後ろから声をかけられる。
若そうな男性……同じくらいか、Aより少し上だろうか。
「はい、そうです」
「よかったら一緒に写真撮りませんか」
「え？」
リーグスタッフは写真なんて言われないからマニュアルに一切記載がなかった。
とはいえ、断るのも微妙だろうか。
「えーっと……は」
「写真ならオレ様も一緒に入って良いよな、ボールガイも入れようぜ」

半ば強引にキバナが入ってくる。
キバナの客はどうしたのだろうか。目をやると、列がまだ残っている。
「え？えっと、その……」
「スマホロトムはこいつだな、撮るぜ」
何が起きているのかわからない。
とりあえずポーズを取って、シャッターに間に合わせた。
「あ、ありがとうございます」
「キバナのサインはいらないのか？また来いよー！」
「ええっと……メリークリスマス！」
帰っていく男性にそう声をかけておく。
急に非効率な動きに出てどうしたのか、と口を開こうとしたところに、リョウタがキバナの手を掴んだ。
「キバナさん、お客さんがお待ちですので」

「あはは……リョウタさん、手間増やしちゃってごめんなさい」
言いたいことはまだある。が、それは今日の仕事が終わってからで良いだろう。
「メリークリスマス」
ボールガイと写真を撮りに来た子供に、そう声をかけた。