【ポケモン剣盾】黎明のポケモントレーナー (ページ35)

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9.零れ話ページ35

あれはいつのことだったか。
冬の新作が出た頃だから秋だったかもしれない。

「Aって本当にSNS見ないわよね」
ルリナがケーキを口に運びながら言った。
その横でソニアが同意するように頷きながらコーヒーを飲んでいる。
「えっ、そう？ルリナがこの前広告で着てた新作のニットは買ったんだよ？あれSNSにアップしてたよね……ほら」
Aはルリナにスマホロトムの画面を見せた。
「高かったけど、人気そうだから発売日に並びに行ったんだから」
「あら、ありがとう。良い生地でしょう？」
「肌触りがめちゃくちゃ良かった！他の色も欲しいけどまあまあ値段するからね」
「そうじゃなくて！！」
ソニアがツッコミを入れる。
Aはごめんごめん、と苦笑した。

「SNS……見てるつもりなんだけど…」
「私たちのアカウントは見てるけど、トレンドとかジムリーダーのアカウントとかは見てないんじゃない？」
「ネズさんのは見てるよ！物販に新しいの出すって書いてた！」
確かあくセットとタオルが新しく出るはずだ。
タオルは絶対に確保したい。
「いや、そうじゃなくて……まあ見るからに大丈夫そうなら良いか」
ソニアが何か言おうとしたが、大丈夫ならオッケー、とケーキの上の苺をフォークで刺した。
ルリナも微笑んで頷く。
「そうね、ジムチャレンジの前で忙しくてそれどころじゃなかったんでしょうし」

「……何それ、気になるよ」
「私たちが勝手に心配してただけだよ、何もないなら大丈夫」
「ってことはキバナくん絡みのこと？」
ルリナがソニアを膝で小突く。なるほど、正解らしい。
Aはキバナのアカウントを見つけて、投稿を遡ってみた。
目の前では二人が「ほら余計なこと言うから」「でもルリナも心配してたじゃん」と言い合っている。

画面をスクロールすると、沢山の自撮りや砂嵐の写真が投稿されている。
特におかしなところはないが……女の子からのコメントが予想通り多い。
「女の子からのコメント多いんだ…そりゃあそうだよね」
胸がちくりと痛む。
わかっていることなのに、文字として視認してしまい、ずしりと重さを持った。
「それもだけど、その……Aのアカウントとか荒らされてないかなって、メッセージとか」
ソニアがおずおずと言ってくる。なるほど、そういうこともあるのか。
「ううん、大丈夫」
「良かった、AはSNSに投稿もしてないから特定のしようもないのかもしれないわね」
Aはそっとアカウントに鍵をつけた。