【ポケモン剣盾】黎明のポケモントレーナー (ページ26)

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季節間話2.棒菓子の日ページ26

「おう、A、来てたか」
「客人に窓から入れって言う人、初めてだよ」
そう言ってスマホロトムを振る。
メッセージの画面には、『悪い、買い物に行ってるから窓から入っててくれ』の文字。

「悪い悪い、スペアキーを外に隠すのも危ないだろ？」
「そうなんだけどね」
蒸らし終わった紅茶の覆いを外すと、ふわりと良い香りがする。
リーグ本部への報告の際にマグノリアに何度かダイマックスとムゲンダイナについて意見をもらい、その時に茶葉をお裾分けでもらったのだ。

「ちょうど淹れ終わったよ。茶器は置いて帰って良いよね」
「ああ、サンキュー。良い茶葉は違うな」
キバナはちらりと茶器を見て、ふっと笑みを浮かべた。
黄色と橙の、3つの切れ込みのある舌状花。
野生美を感じさせるその花に心当たりがあるのだろう。彼も一応、ガラルの人間というわけだ。

「急ぎの買い物だったの？」
席についたキバナの前にティーカップを置き、紅茶を注ぐ。
「ああ、今日は棒菓子の日だろ？」
そう言って子供が好む菓子を出してくる。
「そうだっけ？私、そっちじゃなくて中にチョコが入ってるやつの方が好きだったなぁ」
適当に話をしながら自分の分の紅茶も注ぐ。ミルクティーにしても美味しいかもしれない。
「そうなのか？いや、そのメーカーの日じゃないから良いんだ」
「？そう」

Aの様子にキバナが苦笑する。
「A、このお菓子を使ったゲームって知ってるか？」
「なにそれ？」
お菓子で遊ぶの？と言いながら一本もらって齧る。よくある甘いチョコの味だ。
「……なるほど。まあいい、写真撮ってくれるか？」
「ポケスタ用だっけ、大変だね」
棒菓子をサクサクと食べ、キバナのスマホロトムを受け取ってカメラを起動する。
キバナは口に菓子を加えてキメ顔をしている。ポケスタはよくわからない。

「はい、撮れたよ」
数枚撮ってキバナにスマホロトムを返す。
「ありがとう。Aもオレと同じようにしてみてくれるか？」
「……？うん」
2本目を咥える。写真でも撮るの？と思ったと同時に、キバナが反対側を齧る。
刮目していると、キバナは菓子を食べ進め、当然顔が近くなる。
「--っ！？」
驚いた拍子に菓子がぽきんと折れた。
「あともう少しだったんだけどなぁ」
キバナが悪戯っぽく笑う。それで、意図を察した。
「そういうことね」
Aは紅茶を口にする。すまし顔で飲んだ紅茶が熱いのか、顔が熱いのか、Aにはわからなかった。