3.英雄は遅れてやってくる ページ15
「こっちは避難が終わりました、Aさんも、避難された方が良いんじゃないですか」
ヤローが声をかけてくる。
残ったのは北側の避難。時間を稼ごうとAはダイマックスポケモンに対峙するポケモンたちに指示を出していた。
「いえ、大丈夫です。こういう時に対応するのが私の仕事ですから。北側の避難が終わったら私も体勢を立て直します。ただ、今は皆守りの方で仕上げてあるので……」
「そうですよね、あの子はぼくたちがどうにかします」
そう。ポケモンたちのわざが今はバトル向きではない。
今からポケモンセンターに駆け込んでわざマシンを使っている時間はなさそうだった。
「すみません、お願いします」
「ぼくはネズさんと話をしてきます。Aさんも、無理せんでください」
「はい、ありがとうございます」
防戦一方で、北側の避難を待つ。
やはりこのアマージョはおかしい。
トレーナーは見当たらないし、彼女自身が自分のエネルギーを御しきれていない。
トレーナーは一体どこに……？
Aはちらりと振り返る。
北側の避難はもう終わったらしい。
「皆、引くよ！ フライゴン、すなあらし！ 」
すなあらしに身を隠して、ポケモンたちをボールに収める。
「ギャーーーン！！ 」
砂の向こうからアマージョの声が聞こえた。
ダイマックスしたポケモンのわざをもろに受けたらたまったものではない。
Aは急いで出入り口に滑り込んだ。
「……おつかれ、皆」
6つのモンスターボールに声をかけて、エントランスへ向かう。
「おれも手伝いますかね。ポケモンに罪はありませんが、ステージをジャマされてはちょっと許しがたいですよ。ほら元チャンプの弟よ、きみも来るのです」
「オレがついていっても力になれるかどうか……皆の足手まといになっちゃうかもしれないしさ……」
声が聞こえてくる。見ると先ほどの3人に、ユウリが加わっていた。
「多分ですけれど、ダンデなら迷いませんね……道には迷うけど。行きますよ？」
「わ……わかってるぞ！ 」
「ネズさん、兄貴だからなのか何かと世話して くれますねえ。さあ、ぼくたちも行くとしますか」
四人がバトルコートへ向かう。
「良かった、ユウリちゃんもいれば大丈夫か……
くたくたで体は砂塗れだが、ここでシャワーは浴びられそうにない。
スタジアムを出た瞬間、メッセージが届いた。
ルリナA、バウスタジアムに来れる?
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作者名：あくびさん | 作成日時：2020年10月31日 19時
