【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ8)

今日:12 hit、昨日:4 hit、合計:180,184 hit

7.疑いは確信へページ8

ぐんぐん遠ざかっていくフライゴンを見送るうちに、キバナの確信はより強いものに変わっていた。
……空気抵抗を減らすために、その身を隠すように前屈体勢を取る。
少しでも観客から離れたところで10まんボルトを受けるために電撃に向かっていったあの影と全く同じだ。

「あの顔……チャンピオンカップで最初にダンデと当たったあいつだよなぁ……なんで『あんな』なんだ？」
うーん？と考え込む。そうしてすぐに、悩むオレ様も映えるよな？と写真を1枚撮って、流れるようにSNSに写真をアップした。

いくらいいね！がついたところで、キバナの思考のモヤが晴れるわけではない。
なにか足掛かりがないかとダンデの過去のバトルの詰まったフォルダを見て、ふと思い至った。
「そうだ、ロトム！あの時のチャンピオンカップ、また最初から再生してくれ！」

.

『さぁやってまいりました！チャンピオンカップ・セミファイナルトーナメント！！今年は8人のチャレンジャーの中から、一体誰がファイナルトーナメントに勝ち進むのか！？』
カメラがぐるぐるとスタジアムを映し出す。

チャンピオンもジムリーダーもいない、ジムチャレンジャーしかいないトーナメントには違和感を感じるほどの熱狂に、スタジアムが包まれている。
それも、第一戦で。

『第一戦、ガラルの若き英雄ダンデ！！優しく、熱く、最高のバトルを今日も見せてくれるのか！？そして対するは、アゲハントのように舞い、スピアーのように刺す！ A！！最速でジムチャレンジを駆け抜けた彼女は、チャンピオンカップさえ軽く退けるのか！？』

湧くスタジアムの真んで、まだ幼い2人が、画面に映っていた。

. . ...

「A、か……ああなってるとはな……」
Aとバトルをしたことは、なかったはずだ。キバナが街に着く頃にはAはとうにバッジを手にしていたし、チャンピオンカップでは知らないうちにAは姿を眩ませていた。

幾年前の好奇心か、はたまた闘争心か。
色々な感情が混ざり合っては溶け合い、極彩色になる。

「よし、A……絶対にお前を見つけ出して、オレ様とバトルさせてやるからな」
SNSにアップした写真、キバナの自撮りを横にスワイプする。
キバナと、キバナに集まる人混みの写真。
そして澄まし顔で、その輪から離れようとするAの横顔が写っていた。

「よく撮れてるな」
キバナは唇の端を持ち上げて笑った。