【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ7)

今日:14 hit、昨日:4 hit、合計:180,186 hit

6.邂逅ページ7

「そこのフライゴン！ちょっと待った！」
聞き覚えのある、あまり聞きたくなかった声。
「な、んでしょう？」
ぎぎぎ、と振り向いてAは微笑んだ。

褐色肌で高身長の男性。水色の瞳は垂れていて、人が良さそうに見える。側頭部と後頭部を刈り上げた髪型の上にオレンジ色のバンダナを巻いて、ドラゴンをモチーフにしたようなパーカーを着用するこの人。

「何か御用ですか？キバナさん」
「あ、お前、もしかしてダンデとチャンピオンカップでぶつかったトレーナーか？」
Aの顔を見て開口一番。リーグスタッフとしてはAの存在は認識されていなかったらしい。
「え…ええ、確かそんなこともありましたね」

なんでそんなこと覚えてるのーー？？もう惨敗したのも、トレーナーだったのも忘れてしまいたいくらいなのに？
とはいえキバナのことだから、好敵手の試合は何百回も見ているのだろう……彼が1人のチャレンジャーだった頃のバトルから、何度も、何度も。

そう言ってから目の前の男は何か言うでもなく腕を組んでフライゴンを見、Aに目をやる。
うん、そうだよな。この大きさ、この形。あの影も丁度このくらいだな、うん。などと、誰に言うでもない言葉を紡いでいる。

ひとしきり何かを確認して納得すると、目の前の男はじっとAを見つめてきた。
「お前、この前のダンデとチャレンジャーのバトルの時、スタジアムにいただろ」

スッと血が引く気配がする。化粧をしてきてよかった。そうでなければ、酷い顔色になっていただろうから。
「あ、えっと……」
目は逸らさずに言葉を探す。目を逸らしたら負ける。
静かに息を吸って、Aは微笑んだ。
「実は、リーグスタッフをしてるんです。仕事中にお会いしたかもしれませんね」

目の前の男は目を逸らさない。彼は確信しているのだろう。
「あーいや、そういう意味じゃなくて、だ。そのフライゴンに乗って、観客を守ってるのか？ダンデの攻撃から？」
「まさか。そんな人、いるわけないじゃないですか。チャンピオンの攻撃を受けるなんて」
……この前の仕事について反省会をしなくちゃ。
そう思いつつ微笑みは崩さない。

「すみません、もう行きますね」
Aはフライゴンに短く指示を出した。
フライゴンが翅を広げる。
「お前なら、チャンピオンカップでダンデを追い詰めたお前なら、できるんじゃないのか！？」
「ご冗談を！失礼します！」
男の声を強引に張り切って、フライゴンは地を蹴った。