【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ49)

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「さっきの今でごめん、早い方が良いと思って」
日が沈んで、夜の帳が下りる。
もう家の近くにいるのだが、何となく帰宅するのを躊躇していた。
二人に先に言わないと、とスマホロトムでいつもの画面を開いたのだ。

『キバナと会ってたのよね、どうにかなりそう？』
『あ、私が聞こうと思ってたのにー！』
それぞれに心配と、好奇心を見せる友人に思わず安心する。
「その……さっきあんなこと言ってた手前でなんだけど、結論から言うと、その…付き合う、ことになって」
数秒の沈黙が数時間にも感じる。画面の向こうでは2人が刮目し、口をぱくぱくさせている。

『キャーーーー！聞いた！？ねぇルリナ聞いた！？キャーー！！やばくない！？Aが！！ねぇ！』
先に声を出したのは当然ソニアの方で。その場でばたついて、ソニアの画面が揺れた。
『おめでとう、で、良いのよね？そう……良かった』
「気にしないで本当に良かったのに、ルリナずっと連絡先のこと気にしてたもんね」
『まさかAのことまで撮るとは思ってなかったもの、本当に、悪いことをしたわ』
「あ……それ、なんだけど」

言わないといけないことがあって、と言葉を続ける。
ルミナメイズの森の、紛れもない、カメラのシャッター音。
「多分、また撮られたから、よろしく」

.

≪速報！ドラゴンストームの大胆告白≫

大胆告白っていうか、貴方が撮れたのツーショットじゃない。そんな風に思いながらAはパラパラと雑誌をめくった。
辺りではコーヒーの香りと、人々の噂が漂っている。
「あれってキバナさんの…？」「てかA選手じゃない？」「え、いつから？」「あの時A選手に声かけたら良かった」
Aは温かいソイラテを飲んで、頬杖をついた。
雑誌の最初の方、適度に人々がこの本への関心を失わないくらいのところに写真が掲載されている。

「なかなか良く撮れてるな」
Aの後ろから、包むように、覗き込む位置から聞き慣れた声がした。
「遅いよ、キバナくん」
Aの肩に置かれたキバナの手に、自分の手を重ねてみる。自然と微笑むのは、きっと感情のせい。

「人気者のキバナ様は忙しいんだ。ほら、行くぞ」
「うん」
差し出された手に自分の手を重ねると、キバナの表情が柔らかくなる。それを見ると、何故だろう、嬉しくてたまらなくなるのは。

「またお越しくださいませ」
「ソイラテ、ありがとうございました」
テイクアウトのソイラテの代わりに、ゴシップ誌はゴミ箱に突っ込んだ。