【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ48)

今日:22 hit、昨日:4 hit、合計:180,194 hit

47.最後まで付き合ってあげるページ48

呼び出されたのはアラベスクタウンの入り口。
落ち合ったキバナは、何かを決めたのだと直感的に感じ取った。

ルミナメイズの森に移動してからAはキバナに声をかける。
「で、どうするの？」
いつも通りに声をかける。
「A、すまなかった」
「別にいいよ、庇ってくれたし、私も気が緩んでた」
今となっては日向に恐怖心はない。どうにかなる。

「何かあるから呼び出した。そうでしょ？」
「そういうことだ」
彼がこんな時にこんなハイリスクなことはさせないはずだから。

キバナが何かを言う。その声が聞こえなくて言葉を発しようとしたが、それより先にキバナが動いた。
「……受けてくれるなら、すぐに右を向けるか」
心臓が跳ねる。僅かな頷いたと同時に大きな手がAの手を包む。掌に、温かなものが預けられるのを感じていた。

「A、受け取ってくれるか」
"それ"を隠すようにしていた手が離れる。
甘酸っぱい香りと共に、カジッチュが姿を現した。
パッと顔を上げて、キバナを見る。
……ジムリーダーが意中の人を射止めた話、あるいは、恋焦がれた人に振られる話。どう転んでも、隠して追われるよりはマシなのだろう。

お互い、再開したばかりの感情とはまた別のものを抱き始めている。だが、それ以上に、こんな選択をしたのは、結末まで見せてしまった方が守りやすいから……？

Aは掌に預けられたカジッチュを両手で包んだ。
そして、今度はAから一歩キバナに近づく。
「仕方がないから最後まで付き合ってあげる。右で良いんだよね」
目が合えば、あとは言葉は不要だ。

右を向く。
瞬間、腰の辺りを抱き寄せられてAはとっさにカジッチュを大事に抱きとめた。
「ほら、笑え！」
耳元の声に咄嗟に笑うと、目線の先で人工物の音がした。

カシャッ

「今度は良く撮れたか？」
キバナがニヤリと笑った。
「……！」
茂みの向こうの影はガサガサと逃げ帰っていく。
「その写真、ちゃんと使えよー！」
キバナはへらへらと笑っている。そう、へらへらと。

「ねぇ」
違う。いつもはそんな風にしない。Aはキバナの服の裾を掴んだ。これは冗談じゃない。
「パフォーマンス用じゃなくて、ちゃんと答えて良いよね」
体温が上がる。心拍数が増える。
平気な顔をして、さっきのキバナは意外と大変だったのかもしれない。
「最後まで付き合ってあげる」
賭けでもパフォーマンスでもない、そんな憎まれ口を渡して、Aは微笑んだ。