【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ47)

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46.乗じてページ47

「やっぱり撮られてたか」
キバナは顔をしかめた。
おおかた、ヤローのゴシップを探していた記者がいたのだろう。
しかし、ウールーを追いかけてばかりのヤローには噂の破片もなく、うろついていて見つけた、と。

「ロトム」
Aにメッセージを送ろうか、と画面を開いたが、何を言えば良いか分からなくてそのまま閉じた。
自分の他に人のいない部屋は、テレビを切ってしまえば静まり返る。
太陽の他に光源を失って、さらにほの暗くなった。

これが好機か、あるいは不運かわからなくて、キバナは頭を掻き毟った。
自分はAに好意を持ちはじめている。
Aがキバナのことを嫌ってはいないのはわかる。
腹を探っていた最中、外堀が埋まるかもしれないのは好機だろう。だが、彼女がゴシップを狙うカメラの被写体になるのは……気に食わない。

「……オレも覚悟決めるか」
キバナは慣れた手つきで髪をまとめると、ちらりと時計を見た。
タクシーを待つ時間さえ惜しい。
最初とは違う文面をAに送り、少し前から置きっ放しのモンスターボールは鞄の中に突っ込んだ。
軽い調子で階段を駆け下りて、モンスターボールを放り投げる。
「カモン、フライゴン！飛ばすぜ」

.

アラベスクタウンに着いた時にはもうAの姿が見えた。
予想よりも早いので、おそらくアーマーガアに乗ったのだろう。
落ち合ってルミナスメイズの森に少し入ると、さらに人気がなくなる。

「で、どうするの？」
Aの顔には不安そうな様子は微塵もなく、いつもの調子でほのかに笑っている。
「A、すまなかった」
「別にいいよ、庇ってくれたし、私も気が緩んでた」
ほのかに発光するきのこの鮮やかな色が、Aを飾る。
シチュエーションはこれに反して最悪だろう。

「何かあるから呼び出した。そうでしょ？」
「そういうことだ」
Aはニッと笑う。エスパーのように相手を見抜くのは本当に得意なのだろう。…自分のことはわからないくせに。

「しっかりしろ、キバナ」
キバナは小さく自らを鼓舞した。
一歩Aに近づいて、互いにしか聞こえないように言う。
「……受けてくれるなら、すぐに右を向けるか」
Aが頷いたかどうかも確認せず、小さな手を両手で包んだ。

Aはどんな顔をしているのだろうか。
この機に乗じようとしたキバナを、Aは残念に思うだろうか。それとも、やはり見通しているのだろうか。
「A、受け取ってくれるか」
そう、片手を離した。