【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ42)

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「で？今年もエキシビションはやるんですよね」
「ご察しの通り。そして今年はキバナさんです」
数ヶ月ぶりにリーグスタッフとそんな話をする。
「去年みたいにサイトウさんとにしてくれたら良いのに。キバナさんだともうめっちゃくちゃにされますから。私毎年砂塗れになってるのに」
「いやぁ、本当に」

同僚の彼女は、あるドアの前で歩みを止めた。
「今までずっと、チャンピオンにも名乗らずにやってきたのに、本当に良いんですか？」
「ええ…思えば前任の方がずっと自分のことを秘密にしていたなんて聞いたことありませんから、カブさんや、ポプラさんや、メロンさんはとっくに気づいていたのかもしれません」
Aはドアの前で身嗜みを整えた。

先に名前をあげた3人とはジムチャレンジで対面したことがある。
それに扉の先にはキバナも、ルリナも、ダンデもいる。
今更緊張するようなことではないのかもしれないが、改めて日向に出るのは少し勇気がいる。

「……じゃあ、行ってきます」
「はい、お願いしますね」
同僚に背を押されてドアを開ける。
思えば、リーグスタッフの同僚たちにも随分と助けられていたのだろう。

ドアを開いた。
その先には、予想しきってその顔に微笑みすらたたえるカブ、メロン、ポプラ。目を丸くしたルリナとダンデ。来たな、とニヤリと笑うキバナ。
他の面々は、誰かわからず怪訝そうな顔をしている。……憧れのアーティストとの対面がこんな形になってしまうとは。
「初めまして、と言うのが適切かはわかりませんが……--年前からリーグスタッフとして、皆さんのバトル中に観客席の保護をしています、Aと申します。今日は、皆さんに安心してバトルをしていただくための顔合わせと…」
Aは言葉を切って資料を取り出した。
「来るジムチャレンジのご説明に参りました」

.

「なんで言ってくれなかったのよ」
説明が終わって解散した瞬間にルリナに捕まる。ダンデはあちこちで「Aは強いぞ！これは安心だな！」と宣伝してまわっている。
有難いが流石にやめてほしい。
「ごめん、客席のことを気にしたら本気で戦えないかと思ってたの。でも、知ってもらってその上で安心させるのも大切なのかなって」
「今度の子はシャイなんだろうって、年増のジムリーダーたちで言ってたんだよ」
メロンが声をかけてくる。
「顔を見せに来てくれてありがとう。これでもっと安心して戦えるよ」
「……ありがとうございます」
日向の温度にAは微笑んだ。